ランサーズがランサーとの協働を強化する真の狙いとは
自由と安定が共存できる新しい働き方の本命
プロワーカー最前線 <第一回>
次世代の働き方の本命は、“プロワーカー”--。終身雇用制の崩壊、企業寿命の短命化など、正社員を取り巻く環境は、もはや「安定」とは程遠い。企業にぶら下がることがリスクにすらなる時代に頼れるのは、自分自身しかいない。そうした中で、会社員の安定感とフリーランスの自由を兼備する新しい雇用のカタチが浮上している。顔が名刺代わり、所属フリーの「プロワーカー」だ。その最前線に迫る。
ランサーズ第二オフィスに隠された目的
4月下旬に渋谷にオープンしたオフィスの一角であるセミナーが開催されていた。内容はコンテンツマーケティングに関するもの。集まっていたのは、コンテンツマーケティングに興味のある企業約70社。実はその場所は、クラウドソーシングのランサーズが、手狭になったオフィスのサブスペースとして、新たに開設した第二オフィス。その名は「新しい働き方LAB」--。
急拡大できしむオフィススペースの確保が、新設理由の第一だが、もう一つ大きな目的が隠されている。それは、ハイエンドランサーとの協働強化だ。実施されていたセミナーは、まさにその一環。ランサーズに登録する中でもハイエンドのランサーを有効活用し、ハイクオリティなコンテンツを作成する組織編制、システムなど、今後の方向性を説明。いわば、同社の営業活動だ。
同所には、執務エリアとは別に各種イベントが行える「STUDIO」と呼ばれるスペースがある。最大200人を収容でき、冒頭の様な発注側となる企業向けセミナーはもちろん、各種の撮影機材も常備され、動画制作や撮影など、ランサーズとランサーの協働を推進、加速させる場としての多目的な活用が見込まれている。
なぜランサーとの共働を強化するのか
なぜ、フリーランスと仕事を結ぶプラットフォームのランサーズが、ランサーとの協働を強化するのか。その理由の奥に、「プロワーカー」が今後主流になり得る重要なヒントが隠されている。
「企業が、ランサーに仕事を頼む際、相手がフリーだと、どうしても高単価の案件はオファーしづらい。やはり、身元確認や支払い、発注したい制作量などの課題がそうさせているようです。そこで、ランサーズ自体が企業と契約し、ランサーと協働し、継続的にコンテンツ作成をする『ランサーズfor Business』があります。このカタチが、ランサーの受注単価を上げるのに有効と考えています」と同社事業開発部長の幸村潮菜氏はランサーとの協働強化の理由を明かす。
ハイエンドなランサーは、実力があっても、高単価案件を受注しづらい。そのボトルネックを、ランサーズが前に出ることで解消し、受注した案件内容に合わせ、同社が目利きした優秀なプロワーカーとして、ランサーに発注。結果的にランサーは、個人への高単価案件として、そのスキルを発揮してタスクをこなし、安定した収入確保を実現する。まさに会社員の安定とフリーランスの自由を兼ね備えるプロのワーカーとして、ランサーが活躍できる土壌づくりがイコール、ランサーとの協働強化というワケだ。
同社が特に注力するのが、コンテンツマーケティング支援。それを後押しする新サービス「Quant」(クオント)もリリースした。トップクラスのライター約1,300人のポートフォリオサービスで、職歴やスキル、過去記事とそのマーケティング効果を可視化。評価しづらいクリエイターの実力が一目で分かるようになっている。これにより、発注側は、個人に対し、目利きでなくとも“プロワーカー”を見極めやすくなり、高単価案件もオファーしやすくなる。
創業時から「ランサー第一主義」を掲げるランサーズ。同社にとって、ランサーの安定収入の確保は、大きなミッション。それこそが、フリーランスが正社員、非正規社員に次ぐ、第三の新しい働き方となることを実現することそのものだからだ。新しい働き方をけん引するランサーズが、プラットフォームとしての拡充と並行し、フリーランスとの協働を強化する動きは、純正なフリーランスはもちろん、副業組のワーカーの“プロ化”にも少なからず影響をもたらすことになりそうだ。
◇プロワーカー最前線 <第二回>:“エンジニア2020年問題”の先に透けるポスト正社員の合理的なカタチ