
ランサーズストアに透けて見える働き方の未来のカタチ
逆クラウドソーシング? サービス投入の狙い
ランサーズが4月中旬にランサーズストアをオープンした。フリーランスとしてのスキルや実績をベースに、仕事とマッチングする同社のこれまでのカタチとは真逆といえる新サービス。その狙いや可能性について、担当者を直撃した。

ランサーズストアを解説する上野氏
「実は創業当時から、ランサーさんのプロフィールの中に仕事メニューという項目がありました。ランサーさんが何ができるのかをアピールするものです。その名前を変え、機能をバージョンアップしたものが、ランサーズストアとなります」とプロダクト開発部の上野諒一氏は説明した。
モノやコトを売るサービスには「ココナラ」がある。ランサーズストアは、後発のイメージだが、実はとっくの昔に機能としては存在していたというのは、意外な事実だ。ではなぜ、このタイミングでバージョンアップしたのか。
「ランサーズでは常にサービスを改善しています。ですので、タイミングに対する思惑はありません。今回の新サービスのきっかけを挙げるなら、ランサーさんから寄せられる「声」です。ランサーさんは通常、クライアントから案件を受けるというカタチになるため、業務計画が立てづらいという課題がありました。そこでランサーズストアでは、自らのサービスや働ける時間を示し、能動的に提供する機能を強化しました。その結果、ランサーさんは戦略的に計画を立てやすく、そうした課題が解消されると考えています」と上野氏は明かす。
クラウドソーシングでは、人がスキルごとに分類され、仕事内容に応じて企業が発注者を選択する。アナログの時代には途方もない作業だったフリーランスの仕事探しが、大幅に簡略化された恩恵は計り知れない。だが、それでも数十万人の中から選んでもらうとなると、よほどの実力者でなければ至難の業。運も影響することは否定できない。
ランサーが能動的になることで生まれる無限の可能性
ランサーズストアは、いわば、そうした砂漠の中で砂金を探す困難を、自ら工夫することでみつけやすくするアプローチといえる。「イラストレーターです」というアピールより、「ディズニー風の似顔絵が描けます」と実物とともにアピールする方が圧倒的に説得力がある。「マンガ描けます」より、「抱腹絶倒の4コマギャグマンガならお任せください」の方が頼みたくなる。それはつまり、ランサーの潜在力をプラットフォーム上で全開にするアピールのカタチでもある。

ランサーズストア:www.lancers.jp/store
こうなると、ランサーは売り込み方を自ら研究することも可能になる。どんなキャッチだと購買率が上がるのか、どんな見せ方だと食いつきがいいのか…などまさに自らの価値を自らの行動でマーケティングできる。提供価格も自在に決められるため、反応をみながら、変動させるのもいいかもしれない。
つまり、ランサーズストアは、ランサーを受け身から能動的にシフトさせるだけでなく、各自の価値を磨き上げ、知らしめる場としての機能も持っているといえる。従来の待ち受け型ではパッとしなかったランサーが、ストアでは一転、引く手あまたになる可能性は十分にある。その実績から、従来型でも安定受注を実現することにつながっていくこともあるだろう。
スキルをベースとした発注側へのアプローチになじみのない日本では、「人」が選別の基準になりがちだ。だが、「人」ほどあいまいなものはない。明確に可視化できないからだ。スキルベースの発注側へのアプローチは、すでにココナラがその土壌を築きつつあるが、国内最大級のクラウドソーシング企業・ランサーズが本格的に乗り出すことで、日本でもスキルベースの発注が行われる流れが加速していくかもしれない。