
着実に正社員を侵食しながら押し寄せるプロ化の波
身近な職種でも進む“プロ化”が進む背景
プロワーカー最前線 <第四回>
プロ化の波は、昔ながらの職業へも押し寄せている。人口減少による2つの側面、「市場縮小」と「人材不足」の余波で、社会構造が激変。旧来のビジネスモデルがフィットしなくなっていることが根底にある。店を構えたり、人を雇うことが難しくしくなる中で、企業側が変化し、従業員のプロ化を促進している構図もみられ、動きはジワジワと広がるつつある。

業種業態を問わず押し寄せる“プロ化”の波
タクシー業界の国際モータース。同社が導入する「km提携個人タクシー制度」は、タクシードライバーのプロ化といえる、個人タクシーへの転換を促進する制度だ。タクシードライバーのキャリアパスとして、管理職や役員、ハイヤードライバーになる道の他、独立して個人タクシーになる選択肢もある。いわゆるフリーのタクシー運転手となるため、その自由度は高まる。だが、昨今は、先の見えない景気低迷の真っ只中。全てが自己責任になる“フリー”転向は、簡単には踏み切れないのが実状だ。
同制度は、そうした個人事業主になることによるリスク面を、営業面の他、ブランドやカード決済の共有のほか、社員食堂、提携LPGスタンド等の設備、福利厚生の共有などで、全面バックアップ。提携により、個人の弱みを補完することで、個人タクシーでも安心して働ける環境を提供し、“フリー化”をサポートする。
美容師の世界にもフリー化は広がっている。イメージと裏腹に古い体質も残るといわれる美容業界。そこに風穴を開けるべく、アクションを起こしているのが、turbaだ。同社は、美容師に施術場所の提供と個人ブランディングの支援を行うことなどで、美容師のフリー化をバックアップ。施術に集中できる環境確保と取り分のアップによって、効率よく収入を得て、ダブルワークなど、さまざまな可能性にチャレンジすることを推奨。美容師のパフォーマンスの最大化を支援する。
クラウドソーシングにも“プロ化”の波
主にフリーランスが仕事を獲得するプラットフォームであるクラウドソーシングでは、“格付け”によるプロ化が進む。能力の高いフリーランスをプロフェッショナルと認定する「プロクラウドワーカー制度」は、クラウドワークスが導入する。クラウドソーシングでは、顔が見えない取引が基本となるだけに、発注側にとって、人選が難しい側面はぬぐえない。そこで、運営側が、独自基準でクラウドワーカーを評価し、「プロ」認定。お墨付きを与えることで、良質な人材供給に寄与する。
これらフリーランス周辺の企業と連携したアクションに共通するワードはズバリ「プロ化」だ。個人が、企業と緩くつながりながら、その実力によって、相応の収入を得る。これはまさにプロ野球選手やJリーガー同様のプロの稼ぎ人。しかも、立場的にはフリーながら、それぞれが会社に代わるプラットフォームを拠点とし、会社員としての「安定」まで確保する“プロ社員”ともいえる、新しいポジションだ。プロゆえに、能力が高ければ、報酬も上がり、フリーなので、複数企業とも契約可能なのが、大きな魅力といえる。
モブキャストではプロ契約制度を導入しているが、これは、正社員とは一線を画し、秀でた能力があり、同社が認めればプロとして契約するシステム。もちろん複業でもOKだ。同社ではプロゲーマーらと契約を結んでいる。このように、プロ意識の高いワーカーにとって、その能力を最大化できる環境が業種・業態を問わず着々と整いつつある。
もっとも、出来る人材にとっては、可能性が無限に広がる展開だが、だからこその盲点もある。並みの人材にとっては、気を抜くと下層へ転落しかねないということだ。従来型の働き方にどっぷりつかり、ぶら下がり体質が染みついてるいわゆる正社員的ワーカーにとっては熱湯の様な環境かもしれない。進むプロ化の波は、従来の正社員を飲み込みながら、今後、働き方のシフトを加速させていきそうだ。
⇒過去のプロワーカー最前線