働き方

新たな未来を築くために最初にやるべき重要なこと

投稿日:2016年6月20日 / by

変人・安田の境目コラム

「失われた年月」はどこまで伸びていくのか

「失われた十年」と言われていたものが、失われた二十年に伸びた。恐らくこの先、失われた三十年、失われた四十年へと伸びて行くことだろう。 time この流れを止める方法はひとつしか無い。それは、日本を再びかつてのような成長路線に乗せること、ではなない。もはや成長しないのだと認めることだ。

ついこの間までは、150キロの豪速球を投げることが出来た。ついこの間までは異性にモテまくっていた。今はちょっとスランプだが、これは本来の自分の姿ではない。ちょっと練習すれば、ちょっと努力すれば、元の姿に戻れるはず…。 人は往々にして、このような錯覚に陥ってしまう。つまりは自分の衰えを認めたくないのである。だがどんな人間にも、どんな会社にも、どんな国家にも、成長が止まるときは必ずやってくる。

衰えは生物が辿るべき当然の運命

かつて無敵艦隊を誇っていたスペインも、七つの海を支配していた大英帝国も、今はもう普通の成熟国家になってしまった。世界の亀山工場を誇っていたシャープは台湾企業に買収され、リストラを繰り返す東芝も生き残れるかどうかの瀬戸際まで来ている。

全盛期を経験してきた先達は口を揃えてこう言うだろう。「かつての勇姿を思い出せ、あの栄光をもう一度取り戻すのだ」、と。だがそれは、無茶というものである。それは例えて言うならば、20歳のときの自分が50歳の自分に同じことをしろと要求するようなものだ。 もっと早く走れるはずだ、と要求したくなる気持ちは分かる。だがその期待に応えることは不可能なのである。なぜならば、身体が衰えてしまったからだ。成長のピークはもはや過ぎ去ってしまったのである。どんな過酷な練習をしようとも、どんなに緻密な戦略を立てようとも、衰えを止める事は出来ない。それが生きているものの宿命なのである。

潰れた会社や、滅んだ国家は、成長もしないが衰退もしない。なぜならば既に死んでいるからである。生きている会社、生きている国家は変化する。生物と同じように。成長し、ピークを迎え、衰えていくのだ。だがこの現実を受け入れられない人も多い。 彼らは成長というものが、永遠に続くものだと思い込んでいるのである。売上は伸び続けるし、経済も成長し続ける。要はやり方の問題なのだ。お金を増やせ、投資を増やせ、消費を刺激しろ。そうやって、失われた二十年は作られて来たのである。 日本の実力はこんなもんじゃない。奇跡の復興を思い出せ。俺たちは世界をリードしてきた国だ。

もちろん、それは事実である。だがそれは、もう終わってしまった過去の話である。徳川幕府は無くなったし、大英帝国も衰退した。どうして日本だけが発展し続けると言えるのだろうか。 衰えは悲惨なものではない。それは生物が辿るべき当然の運命なのだ。大事なのは過去にすがりつくことではなく、新たな未来を築いていくことだ。そのためにまずやらなくてはならないこと。それは現実を受け入れることである。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)

yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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