働き方

不労所得がベースになる社会のルールとは

投稿日:2016年6月27日 / by

ベーシックインカム導入で社会は崩壊するのか…

全ての国民に最低限の生活費を無条件で現金支給するシステム。それがベーシックインカムである。余計な社会保障が要らなくなる、という賛成派もいれば、共産主義国家にように誰も働かなくなる、という反対派もいる。

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働き者の日本人には絵空事のように感じるが、実際に導入を真剣に検討している国もあるし、国民投票に委ねようという先進国まで現れて来ている。
ベーシックインカムが実現するのはそう遠くない未来かもしれない。働かなくても生きていける夢のような社会。そこではどのようなことが起こるのだろう。誰も働かなくなって、社会自体が崩壊するのだろうか。

実は我々の身近なところに、このシステムを体現したようなバーチャルな世界が存在する。それはソーシャルゲームと呼ばれる世界だ。そこでは一円も支払わないプレイヤーたちが、毎日何百万人もゲームを楽しんでいる。

莫大な開発費を投入して作られたバーチャルなゲームの世界。そのシステムを維持するために必要なのが、お金を払ってゲームを楽しんでくれる課金プレイヤーの存在だ。コアなプレイヤーは月に何十万円ものお金をゲームにつぎ込む。彼らはゲーム会社にとっての最上顧客というところだろう。

一方で、課金プレイヤーの100倍以上も存在すると言われているのが、一円も支払わずにゲームをする無課金プレイヤーである。彼らはゲーム会社に一円の利益ももたらしていない。にもかかわらず、ゲーム会社は彼らにも楽しめるフィールドを用意している。

なぜ無課金プレイヤーにも場を提供するのか

ゲームをやり続けるだけで、そこそこ強いカードやアイテムが無料で手に入るように設計されているのである。そんなことをしたら、誰もお金を払わなくなるのではないか。そう思うだろうか。だが実際には、課金プレイヤーたちはお金をつぎ込み続けるのである。
なぜ無課金のプレイヤーにそこまでサービスをする必要があるのか。それは、ゲームがつまらないと無課金プレイヤーがいなくなってしまうからである。無課金プレイヤーがいなくても課金プレイヤーだけいれば儲かるだろう。そう考える人は人間の心理が分かっていない。

課金プレイヤーは強いカードでゲームを楽しみたいのではなく、弱いカードしか持っていない人に優越感を抱きたいのである。無課金プレイヤーという貧乏人がいなくなってしまったら、課金プレイヤーの喜びもなくなってしまう。だから運営側は無課金プレイヤー達を繋ぎ止めるために、強いカードを少しずつ小出しにしていく。

少しずつではあるが、強くなっていくことによって無課金プレイヤーは楽しめる。そして、強くなっていく無課金プレイヤーに優越感を抱き続けるために、課金プレイヤーは更に強いカードを購入し続けるという訳である。

そこそこ楽しく生きていくだけなら、お金を払う必要はない。上位に位置して優越感を抱きたいのなら、それだけのお金を払わなくてはならない。それが未来社会におけるルールなのかもしれない。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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