働き方

約半世紀で鮮明になった若者の「働く目的」とは

投稿日:2016年7月7日 / by

若者の働く目的は健全なのか

48年で鮮明になった若者の働く目的とは。公益財団法人 日本生産性本部「職業のあり方研究会」(座長 岩間夏樹)と一般社団法人 日本経済青年協議会は、平成28年度新入社員1,286人を対象にした「働くことの意識」調査結果をとりまとめた。この新入社員の意識調査は、昭和44年度にスタート。今年、48回目を数える。そこからみえてきたのは、若者の働く目的の明確な変化だ。

日本生産性本部「職業のあり方研究会」、 日本経済青年協議会調べ

日本生産性本部「職業のあり方研究会」、 日本経済青年協議会調べ

何のために働くのか…。いくつになっても判然としないビジネスマンにとってある意味永遠のテーマ。約半世紀続けられる同調査を俯瞰してみると、新入社員の働く目的が、15年ほど前から大きくシフトしていることが分かる。下落する一方の「自分の力をためす」に代わり、「楽しい生活をしたい」が右肩上がりで伸び続けているのだ。

「自分を試す」より「楽しい生活」が示すモノ

最新の調査結果でも、「楽しい生活」が過去最高を更新し、41.7%となっている。一方、かつてはバブル期を除いてトップになることもあった「自分の能力をためす」はどんどん減り続け、最新の調査でも12.4%と過去最低を更新している。この結果は何を示しているのか。確実にいえるのは仕事はあくまで滅私であり、私生活を楽しむためのひとつの手段、というクールなスタンスだ。

「24時間働けますか」は極端にしても、会社のために全てを捧げるというスタンスではなく、それなりの生活ができるお金を稼ぐために自分を抑えて取り組むもの、という向き合い方だ。日本社会は、頑張っても報われずらい状態が長らく続いているだけに、無理はいえない。その代り、自分の時間はしっかり楽しみたい、ということなのだろう。

至って合理的だが、野心は感じられず、日本の最前線の若者の状況としてはあまりにも寂しい。「一億総活躍社会」の文脈でみても、女性やシニアのバイタリティの方が上回るようでは、本末転倒とさえいえる。

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不思議なのは、「会社を選ぶとき、あなたはどういう要因をもっとも重視しましたか」という質問に対して最も多かった回答が、「自分の能力、個性が生かせるから」(33.2%)だったという点だ。傾向としては下落を続ける「自分の力を試す」と相反しているからだ。この矛盾を解くカギが、企業の事情にあるとすれば、もはや正社員を目指す意味がどこにあるのか、と思えてしまう。

何のために働くのか。それ以前に何のために就職するのか、と問いたくなる奇妙なねじれ現象。とりあえず企業に入り、我慢して給料をもらって、私生活はしっかり楽しむ。それが、若者が就職に描く、最低限の理想だとするなら、日本はかなり深刻な病にかかっている言わざる得ない。日本が格差社会へ転落する足音がハッキリと聞こえ始めている…。

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