なぜいま、パラレルキャリアが注目されるのか
<パラレルキャリアは本当に新しい働き方の本命なのか>
週末に200人以上のビジネスパーソンを集めたイベントのテーマ
7月中旬のウィークエンド、都内であるイベントが開催された。200人以上の聴衆が熱心に各セッションに耳を傾ける。テーマは複業、パラレルキャリアだーー。
パラレルキャリアは、現代経営学を発明したピーター・ドラッカーが提唱する概念。現役のビジネスパーソンが、本業を続けながら、同時にそれ以外のことにチャレンジすること。週末の午後に休息時間を割いてまで、これだけのビジネスパーソンを引き寄せたパラレルキャリアとは、一体、なんなのか…。新しい働き方の本命ともいわれるその可能性や展望を検証する。
パラレルキャリアが拡大する真相とは
パラレルキャリアは複業を意味する。つまり、複数の仕事を同時並行に掛け持ちすること。その本質は、複数の仕事を持って所得を増やすというものではない。いくつかの仕事を掛け持ちすることで必要となる、自身の仕事のマネジメント力の研磨にある。その意味で、かなり高次元なキャリアアップを実現するためのワークスタイルといえるかもしれない。
本業があり、別の仕事を持っていれば、まず優先順位付けが必要になる。最優先が本業だとしても、時にはサイドビジネスが優先されるシーンもあろう。こうしたさじ加減は、単に締切りという物理的要因だけでは難しく、高度な判断力が求められる。そもそも本業がある以上、そこで最大限に結果を出していなければ、「複業」など口にするのもはばかられるのが当然というものだ。
本業を持ちながら他の仕事をするといえば、うらやましい印象だが、むしろ、より厳しい環境に置かれることは間違いない。その意味で、実践には相当の覚悟と自信がなければ、後悔することになるだろう。にもかかわらず、昨今、このパラレルキャリアの注目度はどんどん高まり、実践者が増大している。なぜか? それは、企業が短命化し、一社に依存することがリスクになりつつあるからに他ならない。
皮肉なもので、優秀な人材ほど、上記のような素養を備えている。つまり、日本のこれからの危機をひしひしと感じ取っている。このままではいけない…。そんな思いに突き動かされ、パラレルキャリに踏み出す者が続々誕生している。会場に集まった200人以上のビジネスパーソンも多くは実践者であり、予備軍だ。本質は高度なキャリアアップのための手段だが、経済情勢とシンクロすることで、リスクヘッジとしての比重が増大。それがいま、パラレルキャリアが、注目を浴びる実状だ。
これから数回にわたり、パラレルキャリアの実践ノウハウや課題、展望などを連載で検証していく。