
有識者が描く2035年の働き方とは
2035年はどんな働き方をしているのか…
2035年、日本の働き方はどう変化しているのか…。「そんなことは分からない」。もはやそんなことを言っている状況でない。それほどにいま、日本は産業構造・社会構造が変化の過渡期にあり、もうすぐそこまで、新しい働き方へのシフトがやってきているーー。
2016年1月にスタートした有識者による懇談会「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」が7月25日に終了。安倍政権が打ち出す「一億総活躍社会」実現も見据え、報告書を取りまとめた。19年後という未来に目を向けたゼロベースの意見交換は、現状を飛び越し、誰もが輝ける社会の実現を現実のものとするすぐそこにある未来として、意見を集約し、幕となった。
報告書の冒頭には「2035年はさらなる技術革新により、時間や空間の情報共有の制約はゼロになり、産業構造、就業構造の大転換はもちろん、個々人の働き方の選択肢はバラエティに富んだ時代になる。それにあわせ、あるいはそれを先取りする形で、新しい労働政策を構築していくことが不可欠だ。いち早く新しい労働政策を構築し、将来の日本人には、個々人が『好きで得意な道』を技術革新をフル活用し、世界で類をみないユニークな存在であり続けて欲しい」と記された。
時間や場所にとらわられず、雇用形態や仕事内容もフレキシブルで、個々人が自分にあった働き方を選択し、自分の得意な分野の仕事に従事。最大限の生産性で効率的にイキイキと働く--。これまでの働き方とは一線を画す、まさに理想的なワークスタイルで、老若男女が枠にハマることなく人生を謳歌しながら働き続ける社会を、懇談会は2035年の働き方として描いた。
理想を実現するには主体性が何より重要
報告書では、今後19年の間に特に躍進が見込まれる人工知能についても触れられ、職を奪うネガティブではなく、日本が直面する課題解決に貢献するテクノロジーとしてポジティブに受け止め、生産性や収益の向上に寄与すると期待。また、働き方の多様化により、ミスマッチとなる現状の制度についても税や社会保障の改革も視野に入れた動きが重要になると指摘した。
右肩上がりの時代が終わり、成熟の時代へ突入している日本社会。人口減少という明白な事実がある中で、これから20年後を今から見据えることは、国民の意識改革を促す意味でも重要な意味がある。将来を見据えると閉塞感があり、なんとなく暗いムードが漂いがちだが、決してそんなことはない。報告書にはまさにそんなメッセージが込められている。
これを受け、政府も政策構築の参考にするだろう。ただし、ビジネスパーソンは、他力でいい社会が実現すると思っていてはこれまでと何も変わらない。変わることを信じ、自らが積極的に理想の働き方実現を手繰り寄せる気概がなければ、20年後にいまより厳しい状況に追い込まれているだろう。確実にいえるのは、いま、様々な側面で理想の働き方を実現するハードルがかなり低くなっているということだ。