働き方

企業がウエルネス経営を取り入れないとヤバい4つの事実

投稿日:2016年7月26日 / by

社員が不健康だと企業のパフォーマンスはここまで低下する

従業員の心と体の健康を最大の経営資源と捉え、その増進に全社的に取り組むウエルネス経営。その重要性は徐々に浸透しているが、まだまだ導入企業は少数派だ。だが、社員の健康をないがしろにしていると、企業は痛いしっぺ返しを食うことになる。昨今の企業を取り巻く、4つの事実から、ウエルネス経営軽視がヤバい実状を浮き彫りにする――。

左端:Steve Morley Fitbit副社長、右端:FiNC溝口社長

左端:Steve Morley Fitbit副社長、右端:FiNC溝口社長

ウェルネス経営浸透をけん引するFiNCの溝口勇児社長が、日本企業を取り巻く環境について、データに基づき、身の引き締まる事実を突きつけた。社員の健康に関するもので、4つのデータが示された。

1:心身不調者の増加

第一が心身不調者の増加。企業が行う健康診断における、有所見率は、20年で約20%上昇。精神障害の労災件数も右肩上がりで増加を続けている。

2:心身不調に伴う、離職・求職者の増加

2番目は心身不調に伴う、離職・求職者の増加。日本生命が行った調査では5年以内におけるメンタルヘルス不調による休職者数が増えていると答えたのは、48.2%。半数近い企業で、メンタル疾患で、社員が休職に追い込まれている現状が浮き彫りになっている。

3:離職・休職発生によるコストの増加

3番目は、離職・休職発生によるコストの増加。試算では、従業員1人が精神上の理由で退職し、新たに人材を採用、育成した場合には、998万円。半年間の休職で、周囲が業務をフォローするために必要になる場合にも442万円かかるとされている。(※年収500万円で試算)

4:心身不調に伴う生産性の低下

最後は心身不調に伴う生産性の低下だ。メンタルや胃腸の不調、頭痛、腰痛などにおける業務遂行能力は、30%以上低下するともいわれる。企業が被る健康関連の損失の6割以上が、プレゼンティズム・ロスに起因するともいわれ、社員の心身の不調放置は、業績に大きなマイナスになることは明白なのだ。

言うまでもないが、企業に好業績を生み出す原動力は、そこで働く人だ。優れたサービスも同様に重要だが、それを生み出すのも人。従業員が心身健康でなければ、すぐれたパフォーマンスを発揮できるはずもなく、当然、業績も下降線をたどることになる。経産省が東証の上場企業から健康経営銘柄を選定するのも、単に社員の健康を推奨するためだけではない。社員が元気な企業は、業績も比例するからだ。

なぜウェルネス経営は簡単でないのか

これまで企業は、決して、そうした側面に目を背けてきたわけではない。健診の推奨や福利厚生の充実、残業の削減など、労働環境改善を意識した取り組みをする企業はむしろ増えている。だが、残念ながら、その効果はほとんど見られず、袋小路に入り込んでいる感さえある。その原因を溝口氏はズバリ指摘する。

「立派な福利厚生や健康施策があっても、取り組みが継続できないことが大きな課題です。それから、従業員一人一人にあった生活習慣改善施策を提供できないこともネックです」。素晴らしい福利厚生は、最初こそ社員も飛びつくが、業務の多さなどもあり、やがて継続する意義を見失う。結果、せっかくの号令も空砲に終わってしまう…。

ヘルステックで加速させるウェルネス経営の浸透

こうした課題に切り込むべく、同社が新たなアクションを起こした。ウェアラブル端末の世界大手Fitbitとの提携だ。これにより、同社は、端末から自動的にライフログ(睡眠、心拍、歩数)を取得できるようになる。データ取得の自動化は、入力のわずらわしさを解放し、継続を促す大きな武器となる。この提携で、同社は、一気にウェルネス経営の浸透を加速させる。

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具体的には、Fitbitの連携デバイスから取得したライフログデータが自動的にFiNCアプリに転送され、手軽に健康状態を確認できるようになる。さらに、取得データは人工知能で学習し、オーダーメイドの改善施策を提供。まさに、デバイスを付けているだけで、自身のヘルスケアを効果的に行えるようになる。企業向けには、「FiNCプラス」として、月額500円/1人で提供。ユニークなのは、この金額で社員の家族全員が無料で利用できる点。継続を考慮した時、家族の支えは重要になるだけに、ちょっとしたことだが、大きなポイントいえるかもしれない。

企業にとって、人材が重要な経営資源であることはもはやいうまでもない。だが、業績を考えると、多少の無理を強いるのも致し方ない…。経営者にとって、悩ましい課題だが、上記のようにすでに答えは出ている。いかに従業員の心身を健康にし、そのパフォーマンスを最大化するか。まず、そこに注力しなければ、もはや、人材不足がますます深刻化する今後の日本市場で、企業は生き残っていけないのだ。

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