
完全無料の採用HP制作支援ツール提供の先に見据える次世代の採用
HRテックで加速する戦略人事 <第四回>
求人専門企業が無償投入で描く採用の未来フェーズ
エン・ジャパン 「engage」
採用に特化したサービス「engage(エンゲージ)」でHRテックに参入するのはエン・ジャパンだ。前身の日本ブレーンセンター時代から求職者への詳細な情報提供で、ミスマッチの少ない採用をミッションとしてきた同社。以来30年以上で蓄積された求人・採用に関するデータは膨大にある。

無料でもハイクオリティなHPが可能だ
エンゲージはそれらに加え、企業の情報発信サポートを担う。同社執行役員でデジタルプロダクト開発本部長の寺田輝之氏が解説する。「弊社はこれまで、詳細な情報発信にこだわりながら、求人広告、口コミ情報と段階的に質の強化を図ってきました。エンゲージでは、この2つに加え、3つ目のポイントと考える企業自身の採用HPによる情報発信を支援します。これにより、ユーザーは、詳細な求人広告、現場からの口コミ情報、そして企業自身が発する情報に多面的に接することが可能になり、より的確な企業選びが可能になります」。
採用後に活躍をするためには求職者の事前の情報収集が重要と考える同社は、いまだ採用HPを持たない企業も多い現状にも踏み込むべく、同サービスを無料で提供。採用HPの作成支援に留まらない同サービスは、運用費、管理費はもちろん、応募や採用成功による成果報酬も発生しない完全無料というから驚きだ。それでいて、テンプレートは何万パターンも用意され、企業はエンゲージを活用することで独自に思いのままのHP作成を実現できる。
「他社の採用企業HP作成サービスは、各社が持つ大きなプラットフォームの中での掲載となりますが、エンゲージはあくまで各企業独自のHP作成支援となります。いわばWordpress(ワードプレス)やMovable Type(ムーバブルタイプ)と同じようなイメージです。求人情報専門の検索サイトにも自動で掲載されます。さらに応募者管理ツールを搭載するほか、エン転職に登録する約480万人の転職希望者にスカウトを送信することも可能です」(寺田氏)。

スマホにも完全対応で応募者のとり逃しもない
一部の大企業を除けば、人事の効率化はまだまだ途上にあるが、同サービスはいたれりつくせりの無料ツール提供で一気にそのすそ野を中小にも拡大する勢いだ。目標は今期中の1万社登録に設定しているが、決して無謀には思えない。それにしてもなぜ、これほどまでのサービスを無料で提供するのか。実はここに、人材採用・入社後活躍に注力する同社の狙いが潜んでいる。
「我々としては、口コミ情報もそうですが、あくまで求職者に十分な情報を提供したいというのが一番です。従って、このサービスで収益ということは特に考えてはいません。ただ、エン転職による求人広告、カイシャの評判の口コミ、そしてエンゲージ活用による企業の採用HP。この3つからの吸い上げられるデータはできる限り蓄積したいと考えています。我々がリターンを得るとしたらそこでしょうか」と寺田氏は明かす。
どんなデータが定着につながるのか、あるいは離職しやすいのか。どんな人材がどんな業種で活躍しやすいのか…。蓄積データをビッグデータとして人工知能で解析することで、可視化が難しい採用における人材の見極めや活躍可能性を限りなく正確に把握するーー。そんな壮大な採用フェーズの進化を実現する、極めて戦略的なサービスの序章がエンゲージ投入といえそうだ。
第一回→人事領域に到来したテクノロジーの波がもたらすモノとは
第二回→HRテックはなぜ人材定着に有効なのか
第三回→HRテックが加速する企業認知度の無意味化