働き方

パラレルキャリアを破たんさせないために忘れてはいけないこと

投稿日:2016年8月10日 / by

なぜパラレルキャリアを捨てたのか

ハイパフォーマンスで会社に十分貢献した上でパラレルキャリアを実践する――。前回の連載では日本マイクロソフトの砂金氏の言葉から、複業実践のポイントを示した。今回紹介する、高荷智也氏の事例は、そうしたものとは微妙に違う、いわゆる凡人会社員にも参考になりそうな要素が詰まっている。

パラレルキャリアの失敗について赤裸々に明かす高荷氏(右)

パラレルキャリアの失敗について赤裸々に明かす高荷氏(右)

高荷氏は、エンファクトリーでWebサイトの運営に携わっていた。8年に渡るサイト運営で、まさに十分に結果を出し、事業責任者にまで上り詰めた。その一方で、趣味と仕事関連で磨いた防災の知識を活かし、「防災専門家」としても活躍。会社が「専業禁止」という社風のため、まさにパラレルに活躍していた。

だが、うらやましく見える活動の裏で、高荷氏の脳裏には、やりきれなさもあった。本業で身を粉にして働いても思うように報酬が上がらない。子どももいる。サラリーマンの限界を感じつつ、焦りの様なものが膨らんでいた。そんな時、天使か悪魔か、が耳元でささやく。「男なら独立してみないのか」。専門家としてそれなりに収入もあったので、一念発起、本業を辞める決断をする。

辞めて分かったパラレルに働く上で重要なこと

複業から一転、フリーの防災専門家となった高荷氏は、縛りがなく、自由で、頑張りがそのまま収入に直結するフリー生活で飛躍するハズだった--。ところが、時が経つごとに、不安の方が募っていく。頑張ればそれだけ稼げるものの、仕事がなければ収入はゼロ。不安定な生活に気持ちがジワジワと押しつぶされそうになっていく。そして、独立から1年近くが経ったとき、再び決断する。エンファクトリーへの出戻りだ。

結局、専門家とエンファクトリー社員のパラレルワーカーに落ち着いた高荷氏。エンファクトリーが「専業禁止」ということで、すんなりとUターンできたが、同氏の事例は複業に踏み出す上での重要な注意点を示している。それは、複業の安定剤は本業であるという当たり前の事実だ。会社員という本業があるから余裕をもってもう一つの仕事に取り組める。複業の方が順調なほどつい忘れがちだが、ここを軽視しては、パラレルキャリアはいづれどこかで破たんする可能性が高い。

本業が倒産などで消滅した、という緊急事態でもなければ、本業からは安易には離れるべきではない。少なくとも、もとの会社とはいい関係をキープしておくべきだ。それが複業をうまく機能させる上では大切だ。自身を「凡人」と謙遜する高荷氏は、結果的に独立を経験したことで人間的にもビジネスパーソンとしても成長。いまは本業のありがたみを再認識しつつ、いいバランスでパラレルキャリアを実践している。“凡人”にありがちな迷走なので、パラレルキャリアの実践を思い立った時には、肝に銘じるように思い返して欲しい事例だ。(続く)

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