働き方

HRテックによる危機管理のメリット・デメリット

投稿日:2016年8月19日 / by

HRテックで加速する戦略人事

第6回 離職や精神疾患の予防への貢献が期待されるHRテック

HRテックで期待されるのは、採用や業務の効率化ばかりでない。人工知能を活用するという視点でいえば、離職や精神疾患の予防への貢献が期待されている。本来なら、綿密なコミュニケーションがそうした不幸を回避する役割を担うが、複雑化と膨れ上がる業務量に企業もそこまでケアする余裕はない。とはいえ、放置するわけにもいかない。そこで活躍するのが人工知能だ。

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サスケの「サブロク」はビッグデータを活用したうつや退職をテクノロジーのチカラで予測するクラウド型の人事・労務ツール。その的中制度は、なんと8割以上といわれ、ストレスチェックが義務化された現代の職場問題を解決するツールとして、注目度が高まっている。

予測のフローは、人事・労務データをクラウドサーバーで受領し、分析データへ変換。機械学習によって予測モデルを作成し、判定する。具体的には勤怠情報や性別、年齢、スキル、アンケートデータなどが活用され、分析する。「最近遅刻ぎみだ」、「欠勤が多い」、「連日帰りが遅い」などをデータ化することで、過去の傾向と照合するなどで、例えば退職リスクやうつ罹患リスクがみえてくる。

(株)FRONTEO(フロンテオ)の「AI助太刀侍」は、メールなどのデジタルコミュニケーションで発生するテキストを分析することで、人事管理や営業管理を支援する。業務のやり取りや日報など、社員がデジタルコミュニケーションをとらない日はない。そうしたやり取りの中から同製品は、リスク要因を人工知能が掴み取り、人材流出やハラスメントの発生を早期に発見、防止につなげる。営業日報では、商談の掘り起こしなどにつながる要素を検知し、ビジネスチャンスの見逃し回避を支援する。

精度を高めるほどに慎重さが求められるHRテックの使い方

テクノロジーによるネガティブ行動のケアはドライな印象があるが、あくまでアラートとして捉え、人事担当者が効率的にケアするためのサポートツールと考えれば、その有効性は非常に高いといえる。データによる行き過ぎた管理はかえってマイナスになりかねないが、うまく活用することでウェットな職場を取り戻すことも十分可能だろう。

スマホやスマートウォッチなど、デジタル端末はより細分化され、身近になっている。どこに線引きするかによるが、社員個々のデータをより細かく取得することは可能だ。データ量が多く、さらに種類が豊富なら、解析精度がより高まるだけに、戦略人事の拡がりは、それに比例してデータ取得の範囲を広げることになる。つまり、結果的に社員の遠隔監視を強化する方向へと傾きかねず、活用側はバランス感覚を問われることにもなる。

ネット分野でもその活用データは吸い取られているが、個人情報の問題もあり、活用には慎重だ。同様の配慮が、HRテックでも当然求められる。過剰なデータ活用が社員によるデータ流出抑制へと作用する可能性もあり、そうなれば、データは一転してミスリードを呼び込む粗悪なものへ転落する。ネガティブ要因の発見・防止においては、企業がどこまでデータを取得し、どう活用するのかをアナウンスする際に、細心の注意と配慮が求められるだろう。
第一回→人事領域に到来したテクノロジーの波がもたらすモノとは
第二回→HRテックはなぜ人材定着に有効なのか
第三回→HRテックが加速する企業認知度の無意味化
第四回→完全無料の採用HP制作支援ツール提供の先に見据える次世代の採用
第五回→あらゆる人事情報をデータ化することで社員を“発掘”

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