
同一労働同一賃金という難題解決に秘策はあるのか【瓦の目】
働き方改革実現のボトルネック
働き方改革を推進する政府の動きが水面下で着々と進んでいる。「長時間労働の是正」と「同一労働同一賃金」が大きな柱とされているが、深入りするほど改善ポイントが多岐にわたる働き方を見直す上で、大枠としてこの2つのチョイスは妥当といえる。もっとも、前者はまだしも、後者の実現には多くのハードルが立ちはだかるだろう。
パートと正社員の給与を同じにする--。そうなれば、正社員側から猛反発の声があがるのは陽をみるより明かだ。下手をすれば、業務放棄運動勃発ということにもなりかねない。あくまで同一労働同一賃金と謳っているにもかかわらず、だ。正社員には「責任」がある、「サービス残業」がある…。反論はいくらでもあろう。だが、そもそも、そこを是正することが目的なのだ。単に同一労働同一賃金という言葉上の取り組みではないことを理解しておく必要がある。
発想の転換で生まれる解決の糸口
どっぷりと旧来の働き方が染み込んだビジネスパーソンにとって、頭では分かっていても現実には受け入れがたいのはよく分かる。この難題に、全く違う方向からアプローチしているのが、リクルートホールディングスの取り組みだ。「ZIP WORK」と呼ばれるそれは、人事や新規事業などの基幹部門で、働き方に制約がある人を採用する。当初は、派遣やアルバイトとしての採用ながら、報酬は専門性に見合った額を支払うという。
これまでに社内で該当人材を時短や派遣に切り替える事例はあっても、あえて外部からそうした人材を採用する事例は珍しい。利点は、高い専門性を持った人材を確実に獲得できるところだろう。企業が、こうした形でその門戸を開放する動きが広まれば、子育てや介護などでやむなく不遇な職に就いている人材にとって、渡りに船の選択肢ができることになる。本来、負い目となる時短や雇用形態も、専門性という強みで相殺できるだろう。
外部の専門性に長けた人材の流入は、社員のボトムアップ効果につながることにもなる。そうした人材が、短時間で十分なアウトップットを実現する姿は、社員の働き方の意識改革にこれ以上ない刺激にもなろう。同一労働同一賃金の実現は茨の道に違いない。だが、少し発想を変えるだけで、企業はより効率的に戦力補強を実現する採用スタイルを生み出すこともできる。いまや働き方改革を先導するリクルートホールディングスのこの動きは、ワークシフトを加速させる可能性を多分に秘めるだけに、その動向から目が離せない。