働き方

派遣社員が正社員より魅力的になった時、何が起こるのか…

投稿日:2016年9月27日 / by

6年連続で上昇する派遣の待遇

エン・ジャパン(株)が運営する「エン派遣」の調査(n=1,010)によると、派遣の就業環境良化を実感する声は6年連続で増加している。崩壊神話が既成事実のように叫ばれ、待遇が低空飛行を続ける正社員とはあまりに対照的だ。それでももちろん、正社員の待遇には及ばないが、状況だけをみると、「派遣も悪くないかも」。思わず、そんな誘惑に駆られそうになる…。

エン・ジャパン調べ

エン・ジャパン調べ

同調査によると、最近の派遣の求人状況については33%が「以前よりよくなっている」と回答。これは、2011年の10%から3.3倍の数字。その間、6年連続のアップとなっている。企業の立場に立てば、雇用調整のしやすい契約形態だけに、長らく業績が芳しくないことを考慮すればその増大を誘引する施策とシンクロするのも当然といえるが、とりわけ望んで派遣を選択している社員にとっては、悪い要素はない。

具体的に何がよくなっているのか。トップは、「仕事の情報件数が増えている」がダントツで80%。次いで「勤務曜日・時間・契約期間などの選択肢が増えている」。そして3位は、「時給や給与が上がっている」(45%)となっている。これが正社員ならウハウハだが、現状は真逆に近い。

エン・ジャパン調べ

エン・ジャパン調べ

面白いのは、トップ3はいずれも企業が、喉から手が出るほど欲しい有能人材の確保に向け、昨今強化しているの項目という点だ。有能な正社員、そして都合よく使える派遣にもできるだけ高待遇を、というワケだ。これが何を意味しているのか。それはズバリ、並み以下の正社員はほぼ全員がリストラ予備軍ということだ。

正社員の待遇が停滞し派遣の待遇が上がる意味

終身雇用制が機能していた時代は、企業も並み以下の社員でも抱える余裕はあった。ところが、大企業に限らず、どの企業もいつ窮地に陥るか分からない時代では、出来るだけリスクは抱えたくないのが本音だ。もはや、会社に利益をもたらさない社員に居場所はないのだ。

もちろん、だからといって、すぐにリストラが敢行されることはないだろう。なにせ、日本では正社員を解雇しにくい仕組みになっている。業績に著しい悪化さえ生じなければ、しがみ付ける可能性もある。とはいえ、よほど神経が図太くない限り、そうした環境下で働き続けるのは苦痛だ。過剰なストレスで、業績の前にメンタル状態がボロボロに悪化してしまうかもしれない…。

悲観的すぎるが、年々良くなる派遣の待遇は、そんな神話の崩壊した不遇な正社員にとって、魅力的に映っても不思議はない。同一労働同一賃金実現への動きもある。派遣の最大のデメリットは「不安定」。だが、企業の業績自体が軒並み不安定ないま、不安定な雇用を懸念することはナンセンスでしかない。

年々下落する正社員比率。それに反比例して伸びる非正規比率。2つのラインが交錯し、非正規と正規の比率が逆転する時、そこにある働き方の標準形が、ビジネスパーソンを不幸にするものでないことを願うばかりだ…。

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