働き方

モノが売れない時代に必要なのは、○○を発明するチカラ

投稿日:2016年10月10日 / by

なぜモノが売れないのか

家が売れない。車が売れない。家電製品が売れない。それは日本が不景気だから、だろうか。確かに、国民の所得は、もうずっと頭打ちの状態が続いている。買いたくても買えないのだ、という言葉が返ってきそうだ。だが本当に、原因はそれだけなのだろうか。

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そもそも家は何の為にあるのか。もちろん、住むためである。だが今日本では、住む人がいなくなった空き家が増えて問題になっている。つまり、住むための家は、もう十分に供給されているのである。

車や家電製品も同様ではないだろうか。もう既に大量の車、大量の家電製品が供給されており、壊れない限り買い替える必要もない。移動の手段としての車はもう十分に足りている。都心に住んでいれば車そのものが必要ない。部屋を借りればエアコンはついている。パソコンやスマホがあればテレビを買う必要もない。つまり、必要なものは、もう十分に足りているのである。

必要だから買う。必要でなければ買わない。簡単な理屈である。必要なものが不足していれば売れる。必要以上に供給すれば余る。これもまた、簡単な算数である。つまり、日本という国は、お金という観点から見れば不景気であるが、生活という観点から見ればもう十分に豊かなのである。

モノが飽和状態のマーケットが意味すること

物質的には豊かであるが、もうこれ以上収入は増えていかない。それが日本というマーケットの特徴なのだ。ものを売るという発想では、もはやビジネスが成り立たなくなっていくのである。モノからコトへ。これは中国人観光客にも見られる消費傾向の変化だ。

品質の良い日本商品を、とにかく買いまくる、爆買いという現象。それが終わりを迎えつつある。彼らは既に、物に対する渇望感を克服しようとしているのだ。彼らが今求めているのは、おいしい食事、高級リゾートへの宿泊、観光名所巡りなどのぜいたく体験だ。

では、私たち日本人が求めているのも、彼らと同じようなぜいたく体験だろうか。だが私たちは観光に来ているわけではない。ここで生活しているのだ。高級リゾートや、高価な食事は、日常に組み込める体験とは言えない。しかも私たちの所得は、もうこれ以上増えないのである。

大金を使うことなく、日常に組み込める、何か楽しい出来事。それは、子供の頃に体験した「遊び」のようなもの。特別な遊具があるわけでもない、近所の小さな公園。でもそこに面白い「遊び」が加われば、公園は特別な場所になる。どこで遊ぶかではなく、何で遊ぶかではなく、どうやって遊ぶかが重要なのだ。面白い遊びを発明すれば、そこには人が集まって来る。

これからのビジネスに必要なセンスは、まさにこの遊びを発明する力なのである。言うなれば、飛び抜けた遊び心。それが商品やサービスを特別な存在へと変えていく。たとえば、徹底的にコーヒーの香りを極めるという遊び。究極の卵焼きを食べるという遊び。その遊びの楽しさを教え、遊び方を伝授していく、遊びの伝道師。それこそが、これからの経営者の仕事なのである。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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