働き方

学生が理想の企業に就職するための新たな成功法則とは

投稿日:2016年10月13日 / by

ポスト新卒一括採用の行方

就職戦線異状あり。学生の就活が過渡期を迎えようとしている。ヤフージャパンが新卒一括採用の廃止を検討すると発表したが、すでに大企業ではじわじわと通年採用が広がり始めている。長びく景気低迷で企業に教育コストを潤沢に割く余裕がない。人口減少で、欲しい人材を確保するコストが上昇している…。こうした状況の中、採用の門戸を拡大。本当に必要な人材を確実に採用するスタイルへのシフトが静かに進行している。

想定の倍以上の学生が集まり大盛況となった会場(東京理科大学で)

想定の倍以上の学生が集まり大盛況となった会場(東京理科大学で)

さまざまな状況を考慮すれば、より良い人材確保を実現する上で極めて合理的なこうした採用潮流が加速することは避けられそうにない。そうなると割を食うのは新卒で就職を目指す学生だ。新卒も第二新卒も事実上、30歳未満の転職希望者と同じラインに立つ。スキルタイプにもよるが、当然有利なのは経験を積み重ねている転職希望者だからだ。学生はよほど優秀でなければ、この方式では分が悪いだろう。

さきごろ、東京理科大学で行われたある会合。会場は参加者がギッシリの大盛況だ。実はコレ、同大OB/OGと学生の交流会。同大が、人材企業のビズリーチと連携し、新サービス「ビズリーチキャンパス」をリリース。それを記念して開催されたのだ。日系大手電機メーカー、大手商社、製薬会社など、約30人の同大OB/OGに現役学生約250人が参加し、交流を深めた。

OB訪問の壁を取り払うキャリア教育プラットフォーム

ビズリーチキャンパスは、OB/OGと学生をオンライン上でつなぐ、大学別のキャリア教育プラットフォーム。学生は登録されたOB/OGの中から、自分の興味のある分野で働く人やバックボーンが似た先輩などにボタンを押してアプローチ。アナログでは何かと敷居の高かったOB/OG訪問の壁を一気に取り去る手軽さで、これまで不十分とされた学生のキャリア教育を支援する。2016年7月より12大学でパイロット版が運用されており、順次、拡大していく。

学生を前にどんなOBに会いたいかどんどん言ってくださいとはっぱをかけた南社長

学生を前にどんなOBに会いたいかどんどん言ってくださいとはっぱをかけた南社長

「弊社はこれまでに即戦力人材から20代の若手など、個人の主体的なキャリア形成を支援してきた。そうした中、多様な働き方が進む現代社会において、短期間の就職活動だけでなく、大学生活を通じた就業観醸成支援を求める動きを感じた。アンケートでは学生約9割が有効な情報源として、『OB/OG訪問』と回答。OB/OGについては、ビズリーチ会員が非常に前向きに協力を申し出てくれ、きょうも協力を快諾してくれた。本当に手軽にOB/OG訪問できるツールになっているので、学生のキャリアにおける選択肢と可能性を拡げるサポートができると考えている」とビズリーチ・南壮一郎社長は説明した。

ヤフーの新卒一括採用廃止の意向が公になったことで、意識の高い学生の間では危機感も高まっている。この日、会場に集結した学生は想定の倍以上。1、2年生の割合は3割に達した。大学側も驚く盛況ぶりは、学生の就活への不安が増大している表れでもある。

学生が運命の企業に出会うための新法則とは

学生にとって厳しい受験勉強を終え、入学早々にキャリアのことを考えるのは気がめいるかもしれない。だが、卒業後に希望通りの就職を実現するには、こうしたツールを積極活用することなどが今後は必須となるかもしれない。同サービスでは、OB/OG訪問の他、OB/OGが働き方などに関するざっくばらんな講座を定期的に実施するなど、学生が社会に触れる前段としての充実の内容が提供される予定だ。

OBに積極的に質問する学生

OBに積極的に質問する学生。参加者の3割は1、2年生だった。

若者離職率の高さなどもあり、以前から早い段階のキャリア教育の重要性は指摘されていた。キャリア大学やソーシャルランチなど、関連サービスも多数登場し、少しずつ、その地盤は整備されつつある。最も直接的な企業との接点となるインターンシップは、この5年で約11倍に増大。企業側も優秀な学生確保を見据えつつ、学生のキャリア教育の後押しに前のめりにになっている。

南社長は「いずれは、ビズリーチキャンパスがHRテックとも連動し、出身大学と就職後の活躍データなどが解析され、どんな学生がどんなところがフィットするかなども予測できる時代が来るかもしれない」と話したが、学歴偏重の就活序列が、新たな指標ができることで一変する可能性は十分にある。いい大学に入って、人気の企業に就職する――。そうした成功法則はもはや終身雇用制の崩壊同様、幻想となり、いかに早い段階からしっかりキャリア観を磨き、企業研究するかが、学生が運命の企業と出会う近道となる。そんな時代が到来する日もそう遠くなさそうだ。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について