働き方

2016年のブラック企業大賞ノミネート企業10社が決定

投稿日:2016年12月1日 / by

過労自殺“再発”のあの企業もしっかりノミネート

「ブラック企業大賞2016」のノミネート企業が、ブラック企業大賞実行委員会により2016年12月1日、発表された。電通社員の過労自殺が大きくクローズアップされた中で迎えた5回目の今回も、社員を理不尽に追い詰めるなどの最悪企業がズラリ並んだ。同日より、WEB上に公開され、一般投票も受け付け開始。選考委員による審査を経て、大賞・各賞を決定する。12月23日に都内で授賞式を行う。

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2012年の第一回開催から5年。悪徳企業跋扈の抑止イベントして、着実に認知されつつある同イベントだが、構わず従業員を使い捨てる漆黒企業はまだまだ絶滅の兆しはない。今回ノミネートされた10社も、呆れるほどに従業員を捨て駒のように扱う悪徳ぶりが尋常でない。

(株)エイジスはJASDAQ上場の棚卸し代行業者。違法な長時間労働で千葉労働局から是正勧告を受け、2016年5月19日、厚労省に社名を公開されている。1か月あたりの時間外労働が最長で197時間に及ぶケースがあった。(株)電通も当然のようにリストアップされた。13年前に入社2年目の男性社員が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死認定されており、もはや“病気”のレベルだ。

(株)ドン・キホーテ、(株)プリントパック、関西電力(株)、サトレストランシステムズ(株)、ディスグランデ介護(株)はいずれも、違法な長時間労働が理由で選考された。宗教法人の仁和寺、日本郵便(株)は長時間労働の他、パワハラなどが、その選考理由となった。今回は選考外となったが、一般からの告発で、「ジャニーズ事務所」を推すハガキが100通近く届いたことも明かされた。

全体に長時間労働による“ブラック認定”が目立った今回のノミネート企業。こうした状況について、選考委員でジャーナリストでもある和光大教授の竹信三恵子氏は次のように解説する。「日本の会社のこれまでの労務管理等の在り方が積もり積もった結果が噴き出したような結果といえるでしょう。つまり、従業員が制約型と無制約型に分かれ、何でも無制限にやらされる正社員の働かせ方が、働き方変革の流れの中で、問題として表面化してきた。それが今回のノミネート企業の特長といえます」。

少子高齢化を背景に、人材不足が深刻化する中で、働き方改革が急務となっている日本企業。老若男女が働きやすい職場への転換こそが、企業が存続するための条件となりつつある状況下で、右肩上がりの時代のモーレツな働き方を続ける企業はまさに、時代錯誤。ノミネート企業に、妄想に捉われた英雄「ドン・キホーテ」と同名企業が入っているのは偶然にせよ、あまりに皮肉だ。

変化しつつある“ブラック”の最近の傾向

今回のノミネート企業の傾向とは時間軸でややずれがあるとした上で、選考委員で弁護士としてブラック企業被害対策弁護団代表も務める佐々木亮氏は、最近のブラック企業関連の状況の変化を明かす。「相談ベースですが、私のところに入ってくる話で増えているのは、辞めたくても『辞めさせてもらえない』という相談です。しかも求人詐欺ともいえる虚偽の求人情報で募集しているケースもあり、性質が悪い。かつては追い出し部屋に象徴されるように不当に辞めさせられることが問題だったのですが、人手不足を背景に状況が変わってきています」。

選考理由を説明する選考委員

選考理由を説明する選考委員

時代が変わっても、悪徳企業の心根は変わらない。なんとも悲しいことだが、一方で同大賞の情報発信などもあり、ブラック企業に対する求職者の警戒度は、この5年でかなり高まっている。それでも残念ながら、こうした企業に入社してしまう求職者は後を絶たない。佐々木氏も、ブラック企業を見破ることは「100%は無理です」と断言する。とはいえ、ブラック企業に関する情報は、着実に増大しており、うのみにするのは危険にしても、予防としてインプットしておくことは、働かされる身としては重要だ。

かとく(過重労働撲滅特別対策班)に代表されるように、厚労省の目も一層厳しくなっている。長時間労働については、上限規制やインターバル規制の導入が検討されるなど、法規制の動きもある。ブラック企業の包囲網は着実に敷かれつつある。理想は壊滅。だが、企業を締め付けるだけでは限界がある。求職者自身も、「おかしい」と思ったら、行動する勇気を持つ。それが、ブラック企業撲滅のプロセスには欠かせないことも認識しておく必要があるだろう。

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