働き方

霊長類最強女子の人心掌握術とは

投稿日:2016年12月15日 / by

女子レスリング・吉田沙保里の指導者としての心構え

理想の女性リーダーとはどんな人物なのか。仕事が出来て、面倒見がよく、頼りになる人なら間違いないだろう。女子レスリング界の生けるレジェンド・吉田沙保里。リオでは五輪4連覇こそ逃したが、世界大会16連覇、個人戦206連勝の偉業を成し遂げた霊長類最強女子は、職場とマットの違いこそあれ、全てを兼ね備える。リオ五輪での涙の銀から、コーチ兼任で再起を目指す吉田は今後、まさにプレイイングマネージャーとして、女子レスリング界を新たな立場でけん引する。女性管理職にも通じる、その人心掌握術に迫る――。

コーチとしての心構えを明かす吉田

コーチとしての心構えを明かす吉田

五輪敗退から3か月がたった11月下旬。コーチ兼任で再スタートを切った吉田の姿は、まさに指導者だった。これまでも指導はしていたというものの、晴れてコーチの肩書が付くと、教える熱も自ずと上がる。ただ練習に集中するだけでよかった選手専念時代と違い、指導者としての顔も併せつ持ついま、何を心がけているのか。

「11月に初コーチとして練習に臨みましたが、初めて感覚でしたね。ただ、指導するといっても体は動かしながらなので、気持ちとしてはこれまでと変わらない。きつい練習をさせるのに自分は椅子に座っている、では無責任。一緒に苦しいことをやって、同じ気持ちになることが大切と思っています」と吉田はコーチとしてのスタンスを明かす。

あくまで選手目線。兼任だからではあるが、それにしても全く同じ練習をこなすことを自らに課す辺りは、霊長類最強女子の本能といえるだろう。霊長類では、ただ強いだけでは絶対にボスにはなれない。強さを示しながら、しっかりと仲間を守ることで信頼を獲得。それで初めて、全員に認められる。背中で示すことをモットーするのは、持って生まれたボス志向の証明といえるのかもしれない。

上に立っても忘れないきめ細やかな心遣い

その上で吉田は、心遣いも大切にする。「目配り、気配り、心配りといいますが、気づかいは大切だと思います。それから挨拶と感謝の気持ちを持つこと。そうした思いをしっかり持って日々を過ごしています」と吉田。頂点に立っても決して謙虚さを忘れない。こうした、強さと裏腹の気の細やかさが、下の人間はもちろん、国民からも吉田が愛される理由だろう。

女性に限らず、職場では仕事の出来る人間がいい上司になれるとは限らない。それは、自分の成功法則を部下にも押し付け、出来ない理由を部下の能力のせいにするからだ。このやり方の問題点は、仮に結果が出たとしても部下から信頼を全く得られないところにある。本当に成功法則なら、一緒にその成果を引き出してやるくらいの度量がなければ、過去の成功も単なるうわさレベルの武勇伝ととられかねない。

選手に加えコーチという新たな顔ができた吉田はいま、さらにもうひとつ目標にしていることがある。ママになることだ。「いまは(相手が)全然いませんが、母に子どもを抱っこさせてあげたいですね」と恋人確保を飛び越え、堂々宣言した。2020年の東京五輪出場は流動的だが、ママになって金、というシナリオも、吉田の頭の片隅にはあるハズだ。

タニタ健康大賞を受賞した吉田(写真左は谷田社長)

タニタ健康大賞を受賞した吉田(写真左は谷田社長)

このほど『第13回タニタ健康大賞』を受賞した吉田は、強さの秘訣を「もともと食が細かったが、バランスよく食べるように心がけるようにして強くなった」と健康への意識改革と明かした。霊長類最強、コーチ、そしてママ。着実に人生のステップを駆けあがる吉田の後ろ姿は、スポーツとビジネスという違いこそあるが、職場での飛躍を期待されるビジネスウーマンの昇進プロセスにも通じる部分が多分にあり、頼もしすぎるほどまばゆく映っているいるに違いない。

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