働き方

違法な残業はやはり企業体質との関連が強いのか…【瓦の目】

投稿日:2017年1月18日 / by

厚労省が長時間労働グレー事業所への監督指導の結果を公表

長時間労働は病気の一種なのかもしれない…。厚労省はさきごろ、長時間労働が疑われる事業所に対する監督指導の結果を公表した。それによると、対象の10,059の事業所の内、66.2%にあたる6,659事業所で労働基準法などの法令違反があった。その43.9%(4,416事業所)が労働時間に関するものだった。

extrawork1監督指導の対象となった企業は、月80時間超の残業が疑われる事業所や長時間労働による過労死などに関する労災申請のあった事業所。かなりクロに近い企業であり、健全な経営を行っているなら改善措置が取られていてしかるべき企業だ。

ところが、結果は4割以上が違法な長時間労働を行っていた。危機感ゼロで無策は問答無用だが、もしも改善の意欲はあったが、出来なかったのが多数派なら、長時間労働是正はかなりの難題ということになる。

透けてみえる残業への罪悪感のなさ

もっとも、その実態をみていくと、むしろ事業所の悪質さがにじみ出ている。時間外・休日労働時間が最長の者が、月80時間を超える者は3,450事業所で確認。200時間を超える者も確認されているが、圧倒的に多かったのは、100時間超150時間以下(1,930事業所)だった。このことから、企業が何とか残業を80時間以内に抑えるという意欲はみられず、逆に漫然と労働者をこき使っている実態が透けてみえる。

厚労省調べ

厚労省調べ

100時間超の月間残業時間は、実は2015年(4月~9月)の対象事業場の基準。今回の2016年4月から9月の対象は、月の残業時間80時間に拡大されている。それを踏まえると、残業体質企業の体質改善への意識は、呆れるほど低いといわざるを得ない結果ともいえる。逆にいえば今回、調査対象を拡大したことで、潜在的な残業体質企業のあぶり出しに成功したともいえる。

2016年末に過労による自殺者が出た大手広告代理店は、違法残業を繰り返し、ついには社長辞任にまで追い込まれた。業界の体質が元凶なのか、業務量が多過ぎるのか…。原因はいろいろあろう。その改善は、外から見る以上に“難題”なのかもしれない。だが、過労で心身がボロボロになるのは紛れもない事実だ。そうならない心身を鍛え上げるという発想があるとすれば、ナンセンスでしかない。複数の犠牲者を出しても改善できないなら、命より売り上げが大切と疑われても仕方なかろう。

今回の公表データをカルテに見立てれば、その病状はかなり深刻といわざる得ない。一方で、現場レベルには、「ノー残業なんて非現実的」というやりきれない声もあるだろう。折しも、厚労省は、「働き方改革」に関する意見を募集している(2017年1月27まで)。職場の長時間労働是正を現実的に進めるためにも、現場が声を挙げることは非常に重要だ。病気の治療には、医師の見立てと当人の「治すんだ」という強い意志がなにより求められる。

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