働き方

「退職時の引き継ぎを拒否したい社員」と会社側の戦い

投稿日:2019年9月19日 / by

腹を立てて退職する側の気持ちはわからないでもないが…

退職の引き継ぎなんかしない会社員が自ら仕事を辞める場合、すぐに退職することは基本的にできません。後任への引き継ぎなどを行うための期間、出勤を命じられ、それに従わねばならないものとされています。

退職を決意したAさん

システムエンジニアとしてある会社に勤務していたAさんは、最近退職を決意しました。毎日朝から終電まで働かされているにもかかわらず、年俸制という名目で残業代もなし。

上司もリーダーシップに欠け、客の言いなりで仕様変更にホイホイと応じてしまい、プロジェクトは赤字なうえ、なかなか終了しない。そんな現状に嫌気が差し、退職することにしました。

「一度リフレッシュしたい」と有給休職を取ったのですが、「もう辞めるし終電まで働く生活はやりたくない」と考えたAさん。会社に連絡を入れ「もう辞めます。会社に行きたくないので、退職届は郵送します。私の持ち物は着払いで送ってください」と伝えます。

総務担当が激怒

総務担当者は「そんなことは許されない。最低でも1週間は引き継ぎをしてもらわねば困る」と激怒。するとAさんも「労務管理もしっかりできないくせにエラそうなことを言うな。絶対に行かない」と言い返し、喧嘩になってしまいました。

このような場合、Aさんは引き継ぎを拒否して良いのでしょうか? また会社が退職の意志を示している社員に対し強制的に引き継ぎを命令することは法的に問題ないのかも気になります。

詳細を法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

引き継ぎを拒否することができる?

冨本弁護士:「まず、退職前であれば、会社には従業員に対して業務命令権がありますので、引き継ぎを命令することが可能です。

退職後、労働関係が終了しますので、会社に業務命令権はありませんが、労働関係の終了に伴う各種の整理について、従業員も会社もお互いに誠実に行う必要があると考えられています」

Aさんの気持ちも理解できますが、社員である限り、業務命令権に従わねばならないということのようです。少々納得出来ない気もしますが…。

連絡を拒むことを考えているAさん

そんなAさんですが、会社に「労働力を搾取された」と考えており、「金輪際連絡したくない。引っ越して住所も電話番号も変える」と考えているそうです。

しかしAさんの友人は、「不利益を被る可能性があるのでそれは止めたほうがいい」といわれたとのこと。実際のところどうなのでしょうか?

法律事務所あすかの冨本和男弁護士の見解は…

冨本弁護士:「退職時、連絡先を会社に教える義務まではないと思います。しかし、会社から離職票の交付を受けられないといった不都合も有り得ますので、教えておいた方が良いと思います」

両者とも配慮が必要

会社の振る舞いに激怒して辞める人はかなり多いと聞きます。Aさんのように「何もしたくない」という気持ちもわかりますが、引き継ぎは最後の業務ですので、こなすほうが良いでしょう。

また、会社側も激怒して退職するような社員が出てしまったことを反省し、高圧的な態度を取るのではなく、負担を減らす、引き継ぎ以外の仕事は免除するなどの配慮が必要なのではないでしょうか。

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*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)


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