働き方

社訓を守っていない!と減給された…これも違法では?

投稿日:2021年12月23日 / by

社訓は強制的に押し付けられるものではないとはわかったけど…

以前の記事「ブラックすぎる社訓を押し付ける会社は違法では?」で、社訓はあくまで訓示的なものであり、社員は社訓を尊重すべきとしても、絶対的に順守する必要はないし、ましてや社訓の内容が違法だったり、明らかに不合理な内容であれば、当然、無効になる、ということをご紹介しました。

就業規則や雇用契約で社訓を守るよう言及された場合、その範囲で契約上権利義務が生じることはあり得るそうですが、そのような場合でも社訓が違法な内容の場合はやはり守る必要はないということも明らかになりました。

では逆に社訓が比較的まともな内容であるとして、「君は我が社の社訓をなんだと思っているのかね! 創業社長はこの社訓を信条に会社を成長させたんだ。この心が分からないものは我が社にいらん!!」と言われ、突然解雇されたり、「反省しろ」と給料を減額されたとしたらどうなるのでしょうか?

このような場合でも、“会社に理不尽はつきもの”とあきらめるしかないのでしょうか? 労働契約法的にも怪しい感じがします。そこで今回も、以前の記事と同じく、梅澤康二弁護士に尋ねてみました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

社訓違反で減給処分を受けた

社訓違反が原因で解雇や懲罰を受けた場合には、会社と争うことができる

梅澤弁護士「社訓は直ちに契約上の権利義務を導くものではありません」

ということは、社訓を守らないからと、雇用を解消(解雇)したり、減給などの懲戒処分をすることは、違法なのでしょうか?

梅澤弁護士「社訓の位置づけは前述のとおり訓示的なものですから、社訓を守らないことが直ちに懲戒理由となったり、解雇事由となることはないと考えます。

そのため、社訓違反を理由に重い懲戒処分を受けたり解雇された場合は、その効力を争うことは可能だと思います。争うのであれば、裁判所に労働審判を申し立てるか、訴訟を提起するのが一般的ですが、労働局のあっせんを申請することもできます」

会社による不合理な対応については、法律的な手続によって争うことはできるというわけです。理不尽な会社に逆襲しよう! そう思った方もいるかもしれませんが、ここで要チェックポイント。
あなたに本当に落ち度はなかったものでしょうか?

過去に問題行為を注意され、警告を受けていた場合は法的に争えない可能性大

ごく真っ当に社会人としてのあり方や心がまえを示したまともな社訓だった場合、それを守れないとの理由で上司に解雇を言い渡されるというのは、よほどあなたの態度が目に余るものだった可能性もあり得ます。

梅澤弁護士「社訓に反するような行為を問題行為と指摘され、今後は同様の行為をしないように会社から命じられていた場合、この命令が必要かつ合理的なものであれば、これは有効な業務命令として従業員は従う義務を負うことになります」

そう、上司は社訓違反を解雇の抽象的理由として述べただけで、実際はあなたに対して具体的な注意指導を繰り返していた場合も考えられます。このような具体的な注意指導に違反したことは、責任を問われて然るべきですので、裁判手続の中でもこのような事情は会社の解雇等の有効性を基礎づける理由と評価されることになります。

梅澤弁護士「もちろん明らかに違法、または不合理な社訓に従っていないというのが理由であれば、その命令は必要性も合理性もないため、命令は無効です。そうでない場合は、当該命令違反が懲戒事由または解雇事由の理由となることはあり得ます」

社訓を理由に懲戒処分や解雇などの罰を受けた場合、まずは反発するのではなく、自分の行いを振り返りつつ上司とよくよく話をして、懲戒処分や解雇の具体的な理由を明確にしてもらいましょう。そのうえで、やはり納得できないのであれば、弁護士に相談してみましょう。

そもそも「社訓」とは本来どうあるべきか

最後にもうひとつ、あるべき「社訓」のあり方とはどういったものかをお尋ねしました。

梅澤弁護士「社訓とは、就業規則とは別に定める会社の方針・ポリシーです。したがって、社訓は従業員を拘束するというより、むしろ会社のあり方を拘束するものだと思います。社訓を定めるにあたっては“従業員に何をさせるか”ではなく、“会社として何をしたいか”を主眼に定めると良いのではないでしょうか。会社として“違法行為をしたい” “人を奴隷のように扱いたい”というポリシーはそもそもあり得ません。」

会社をどうしたいかが示されると、社員にとっても選ぶべき道を決めるときに参考になることでしょう。ビジョンが見えている会社であれば社員も安心します。道徳的なことよりも、会社のしたいことが掲げられている社訓かどうか、そんな観点でご自身の勤め先の社訓を改めて確認してみても良いかもしれませんね。

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*取材協力弁護士:梅澤康二(プラム綜合法律事務所所属。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)


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