
「五月病でやる気ゼロ」は解雇の理由になり得るのか
連休明け、どうにも仕事にならない人間がどうなるかというと…
ゴールデンウィークが明けてやる気が出ない…新しい環境に慣れずに無気力に……。
五月病というとなんとなく軽い問題の様な気がしてしまいますが、中には本当に辛くなったり、やる気がなくなってしまう人もいるとのことです。
そんな五月病ですが、やる気が出なくて仕事にならない(労務の提供ができない)社員は会社にとっては大問題。五月病が続くようならそれを理由に解雇は出来るのでしょうか?(powered by シェアしたくなる法律相談所)
解雇が有効となるためには
解雇は使用者の側から一方的に行う労働者との雇用契約の解消ですが、これによって労働者の収入がなくなれば労働者の生活基盤を脅かすことにもなりかねません。
そこで、解雇が有効となるためには、解雇に客観的合理的理由が存在し、かつ社会的に相当と認められる必要があります(労働契約法16条)。
そして、解雇に客観的合理的理由が存在すると認められるためには、就業規則に解雇事由が定められており、労働者にその解雇事由に該当する事由が認められることが必要です。
多くの企業では労働能力の喪失・減退、適正の欠如・低下、勤務成績・勤務態度の不良を解雇事由として定めていますので、解雇が有効となるかどうかは、五月病でやる気ゼロの状態がこうした解雇事由に当たるかどうか、解雇が社会的に相当と認められるかの問題となります。
病気と診断された場合
適応障害や うつ病といった病気によって労働能力の喪失・減退や適正の欠如・低下が認められ、配置転換等の勤務先の配慮によっても労務を提供することができない状況であれば、労働者には酷ですが解雇が有効と考えられます。
なお、病気の原因が仕事にある場合で労働者が病気で休職している場合、休職している期間とその後の30日間、使用者は労働者を解雇することができません(労働基準法19条1項)。
病気との診断がなく気分の問題である場合
病気との診断が労働者の気分の問題である場合、病気でもないのにやる気ゼロであるわけですから、勤務成績・勤務態度不良といった解雇事由に当たると考えられます。
ただし、いきなりの解雇は社会的に相当といえません。何回も注意しているのに改善の見込みもないといった事情が必要です。
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*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)