働き方

役員がセクハラ…懲戒解雇することは可能なのか

投稿日:2022年8月4日 / by

一般社員なら明らかにアウトになるのはわかるが、役員クラスはどうなるか

いまだにセクハラやパワハラのトラブルがニュースとして報じられています。立場を利用し、弱いものに対して言うことを聞かせる行為は、好ましいものではないことは明白です。

このような行為が常態化している場合、経営者としては解雇を考えざるを得ません。しかし、会社を経営する側である役員レベルになると、辞めさせることができるのか否か、悩んでしまうところ。

また、一般社員の場合とは違う手続きなどが必要になるのではないかという気持ちも生じてきます。一体どのような扱いにすれば良いのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

セクハラ役員を懲戒解雇できるか

セクハラやパワハラを起こした役員を、退職させることはできる?

冨本弁護士「役員(兼社員)が、会社が注意していたにもかかわらずパワハラ・セクハラを繰り返していた場合、あるいはパワハラ・セクハラの内容があまりにも悪質で即解雇もやむを得ない場合、懲戒処分としての解雇が有効となる場合もあると考えます。

まず、パワハラ・セクハラを理由に懲戒解雇するためには、パワハラ・セクハラが当てはまる懲戒事由(例えば「職場規律違反」)と懲戒処分としての「懲戒解雇」を就業規則で定めている必要があります。

就業規則で、懲戒事由として「職場規律違反」等を定めていない場合や、懲戒処分として「懲戒解雇」を定めていなければ、根拠規定を欠くことになりますから、パワハラ・セクハラを理由に懲戒解雇することはできないということになります。

一方、懲戒事由として「職場規律違反」等、懲戒処分としての「懲戒解雇」が就業規則で定められている場合は、パワハラ・セクハラを理由に懲戒解雇する余地があります。

しかし、その懲戒処分も、懲戒にかかる労働者の行為の性質・態様・その他の事情に照らし、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、懲戒権の濫用と判断されて、無効になってしまいます(労働契約法15条)。

つまり、パワハラやセクハラの内容・被害を受けた従業員の状況・パワハラやセクハラを行った役員の対応・会社の対応等によって、懲戒解雇が有効となる場合もあれば無効となる場合もあると考えられるわけです」。

一般社員の場合と扱いが違うことは?

役員と一般社員では、扱いに差は出るのでしょうか?

冨本弁護士「一般社員のパワハラ・セクハラの場合も判断基準は同じです。パワハラ・セクハラに対する懲戒解雇について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるかどうかで判断されます。

もっとも、役員が人事権等の優越的地位を利用してパワハラ・セクハラを行った場合、悪質性が高いとして、懲戒を行うべき合理的な理由、懲戒解雇の相当性が認められやすくなることは考えられます」

役員であっても、就業規則に解雇規定が定められており、社会的通念上「解雇相当」と判断される場合は、一般社員と同じよう処理できるようです。

セクハラやパワハラは、人生を変えかねません。くれぐれも行わないよう注意するにこしたことはありません。

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*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)


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