
SNSでパワハラしない/されないための注意事項
SNSやLINEで社内の業務連絡を取り合うこともよくあるが…
職場での立場の優位性を利用した嫌がらせ行為として「パワハラ」という言葉が定着して久しいですが、厚生労働省のデータによれば、その相談件数や労災補償は増加を続けています。
しかも、FacebookやTwitterなどのSNSや、LINEなどのメッセージアプリの利用率が増え、新しいコミュニケーションの形が定着してきた現在、これらも使い方によってはパワハラを生じさせる可能性があります。
このようなコミュニケーションツールで起きがちな問題を避けるためにはどういった点に注意するとよいのか、弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士に伺いました。(powered by シェアしたくなる法律相談所)
職場外での行動拘束がパワハラ認定される場合
SNSやLINEなどを使用すると、勤務外の部下の行動を上司が把握できたり、勤務時間外の業務連絡のハードルが下がったりすると考えられます。これらのツールを用いたパワハラの例として、どのようなものがありえるでしょうか?
梅澤弁護士「通常のコミュニケーションとSNSやLINEでのコミュニケーションを区別することには実益がありません。そのため、通常のコミュニケーションと同様、SNSやLINEで相手の人格を否定する言動を繰り返すようなことは、パワー・ハラスメントに当たる可能性があります。
また、業務用のSNSやLINEから必要が無いのにアカウントを削除する、SNSやLINEを利用して相手の職場外での行動まで拘束しようとする等は、これが職場での優劣関係にもとづいて行われた場合はパワー・ハラスメントと評価される可能性があります。」
通常時にパワハラに当たる行為をSNSやLINEなどを用いて行えば、当然それはパワハラになるのです。
厚生労働省『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ(WG)』の報告書によれば、パワハラを以下の6つに類型しています。
上記の類型で考えると、SNSやLINEの適切でない使用では、(2)(3)(6)の問題を引き起こす可能性が出てきます。
うっかりパワハラ行為をして「冤罪」になってしまうことを避けるには?
SNSやLINEなどはコミュニケーションのハードルを下げるような側面もあるツールであるため、業務時間外のやりとりで相手に負担をかけてしまうことやプライベートな情報に不必要に立ち入るきっかけとなりえます。
また、文字を介してのやりとりの特性上、冗談などの微妙なニュアンスが伝わらずに誤解されてしまったり、それが証拠としてしっかり残ったりと、そのつもりがなくてもパワハラだと認定される可能性もあるでしょう。
このような「パワハラ冤罪」を避けるためには、具体的にはどのようなことに気をつければよいでしょうか?
梅澤弁護士「パワー・ハラスメントと業務指導はその線引が明確でないため、一概にこれをすればハラスメントとならないというものではありません。
ただ、パワー・ハラスメントは業務上適正な範囲を超えた注意・指導・命令がこれに該当しますので、自身の行動が業務上適正な範囲かどうかを客観視する姿勢が重要と考えます。
(2)業務上必要といえるか否か
(3)態様が社会常識の範囲内か否か
注意・指導・命令が、上記の3つの観点から検証することは有意義であろうかと思われます。」
便利なゆえについ軽々しく使ってしまいがちなSNSやLINEですが、その使い方が適切かどうか確認することが大切でしょう。
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*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
(2)脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離、仲間外し、無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)