
職場SNSで「不倫冤罪」にされないための法的知識とは
コミュニケーションツールが発達すると、要らぬトラブルも増えてくる
『不倫冤罪』という言葉を耳にした事がありますか?
かつては、プライベートでの使用がほとんどであったLINEやSNSメッセージを、業務でも使用することは、もう当たり前の時代になっています。
職場の部下や同僚から、メールや電話よりも手軽に気兼ねなく連絡を取れるという理由から、LINEやSNSメッセージを業務でもコミュニケーションのひとつのツールとして使用を提案された事は無いでしょうか。
チャットワークやスラックのようなコミュニケーションツールを日常的に(それもスマホで)使用しているという方も、もう少なくないですよね。
総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)によると、LINEの利用者数は20代以下で62.8%、30代で47.0%、40代で41.8%となっています。
そんな中、ここ最近問題になっているのがLINEやSNSメッセージ等による『不倫冤罪』です。
たとえばこんなケースが例として考えられます。
このように、職場の女性部下とのLINEを使用した連絡が不倫冤罪につながってしまった場合を例に、不倫冤罪について星野法律事務所の星野弁護士に伺いました。(powered by シェアしたくなる法律相談所)
Q.不倫冤罪を避けるためには、1対1のやりとりを避け、複数人のグループでのやりとりを心がけるべきでしょうか?
(星野弁護士)「1対1よりは複数の方がより安全であることはたしかにそうですが、形式的な媒体や人数は、さして重要ではありません。結局はその内容が強く不貞行為を示すようなものでない限り、それだけで、法律上は不貞行為の責任を負うことはまずありません。
そもそも、法律上、既婚者が配偶者から不貞行為の責任を問われる場合というのは、原則として、肉体関係またはそれに準じるような行為があったような場合です。」
Q.今回のようなメッセージは「不倫」の証拠にはならないのでしょうか?
(星野弁護士)「裁判などで、不貞行為の責任を問う場合には、同じホテルやマンションから出てくる場面の写真が一番有効となります。
その一方で、そういった写真が無くても、肉体関係があったことを強くうかがわせるメールやメッセージのやりとりが繰り返しあるような場合でも、他の証拠と合わせて不貞行為を立証できるケースはあります。
ただ、今回のように一見して、業務連絡であることが否定できず、良好な関係を伺わせる程度であれば、たとえ1対1の、メッセージのやりとりであっても、法律上不貞行為があった認定をするだけの証拠としては不十分でしょう。」
Q.「○○案件業務連絡用」など、業務と明確にわかるスレッド名にすると不倫冤罪の危険は回避できるのでしょうか?
(星野弁護士)「タイトルを工夫すれば危険度が低くなるということはありません。配偶者が本文を見るかどうかを判断する一要素にはなるかもしれませんが、タイトルをどのように設定しようが、結局は内容次第です。
逆に“業務連絡”というタイトルで、本文内容が男女の関係を示すようなものであった場合は、裁判上も事実上も逆効果でしかありません。」
Q.使用したスマートフォンが、私用のものか業務用のものかは判断の対象になりますか?
(星野弁護士)「法律上不貞行為の責任を負うかは実質的な内容で判断されますから、スマートフォンが私用でも業務用でも関係はありません。
仮に私用のスマートフォンでLINEやSNSメッセージを使用していたとしても、それが真に業務上のものであれば、法律上不貞行為の責任に問われることはありえません。配偶者が事実上疑いをもつのは否定できませんが、法的には全く問題ありません。」
要するに、実体として不貞行為を行っていなければ当然ながら問題はないということです。とはいえ、先生の回答からもわかるよう、まずは疑われないために、メッセージ内容を業務連絡の範囲内に留め、不貞行為を示すものや、やりとり自体が不貞行為と評価されないよう注意することが、一番有効な対処法となりますね。
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*取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*取材・文・イラスト:新里碧/にっさとみどり (取材漫画家、イラストライター。愛知県佐久島、岐阜県神岡、滋賀県信楽など、地域にまつわるデザインや観光マップ制作など幅広く活動中。Website「Midori Nissato」 )