
勤務先の不正に気付いた!内部告発ってどうやるの?
つい最近も、自動車メーカーや電機メーカー等々…企業の不祥事が尽きませんが
今も昔も、大手企業の不正行為が発覚してニュースになることが数多く起きています。日本を代表する企業で起きることも決して少なくなく、社会的な影響は計り知れないものがあります。
得てして、それらの不正は、会社内で「当たり前」のような状態となっていたことが通常ですが、それを見かねた一部の勇気ある社員が内部告発をしたことで、不正が明るみに出たこともしばしばあるようです。
意外と知られていない「内部告発」のやり方
自分の勤務先である会社の不正を告発することは、間違いなく勇気が要るものです。場合によっては、自分自身の首を絞めるようなことにもなりかねませんからね。つい、「見て見ぬふり」をしてしまう人も少なくないと思います。
しかし、正義感などから、やはり「内部告発に踏み切るべきだ」と考える人もいるはず。この場合、周りの社員にバレないよう、密かに行動する必要があることは、皆さんご存知のとおりです。
その一方で、「どこに、どうやって」告発をすれば良いのかは、あまり知られていないのではないでしょうか。
企業の不正を内部告発する場合、どのように進めれば良いのか、星野・長塚・木川法律事務所の木川雅博弁護士に解説していただきました。(powered by シェアしたくなる法律相談所)
内部告発はどのように行うものなのか
(木川弁護士)「最近も、性能データ数値、リコール件数、決算資料等の改ざん・ごまかしなどの企業の不正に関する報道が相次いでいます。
従業員からの内部告発によって企業の不正や不祥事が明るみに出ることがありますが、原則として内部告発は実名で行うことになっているため、告発による不利益や報復をおそれてしまう方も多いかもしれません。
そこで、実際に内部告発をしたいと思った場合にはどうすればよいかについて、制度を含めて簡単にお伝えしたいと思います」
公益通報者保護制度(内部通報者保護制度)の存在
(木川弁護士)「公益通報者保護法で定められている公益通報は、労働者が、不正目的ではなく、会社や役員・従業員等について生じている(まさに生じようとしている場合も含む)法令違反(コンプライアンス違反)行為を会社や外部に通報することです。
公益通報者保護法や裁判例上、通報した人に対して降格・異動・解雇等の不利益行為を行ってはならないとされており、企業内の不祥事を発見した従業員が通報しやすくなっています」
不利益を受けずに内部告発をするために
(木川弁護士)「とはいえ、不祥事が組織ぐるみで行われている場合などで、実際には通報者に対する退職勧奨や不利益取扱いが行われてきたこともあります。
法律は当事者間で紛争になってから守ってくれるものですので、事実上、不利益な扱いを受けない保証はありません。公益通報者保護法違反に対する罰則がないことも問題視されています。
そこで、通報を検討している方が取り得る方法は2つあります。
1つは匿名で通報をすることです。匿名通報は公益通報者保護法上の保護の対象になりませんが、理由のない不利益取扱いを受けた場合は裁判で争うことが可能できます。
上司や会社を信用できない場合に様子見として会社上層部または外部に通報してみるのもいいかもしれません。
そして、もう1つはその会社に見切りをつけて堂々と実名で通報を行うことです。昔とは違い、不正は明るみに出やすくなっていますのでその会社でキャリアを積んでも、自分のためにならない可能性が大いにあります。
また、そのようなコンプライアンスを重視しない会社では、得てして残業代が払われなかったり、労働環境が良くないなど既に自分が被害を被っている場合がありますので、タイミングとコストを考慮して通報を行うのがよいでしょう。
通報先や、通報のタイミングについて迷われた場合は、第三者委員会や弁護士会の公益通報相談窓口へ相談する、という選択肢もあります。
公益通報者保護法は、結局、公益通報を行うこと自体によるメリットがあまりない上、違反時の罰則もなく、しかも、むしろ不利益取扱いを受けるリスクを背負うだけにもなりかねない、という弱点がある法律です。
法改正もされるべきだと私は考えますし、企業内で自浄作用が望めない場合には通報も選択肢の1つとして考える法令遵守行為が礼賛されるような社会になることを願います」
現状内部告発を行う際には、自分を守るためにも、行動を起こす前に弁護士に相談してみるのも一手のようです。
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*取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)