
「この人痴漢です!」と嘘をついた女性はどんな罪に?
女性側がなかば意図的に「虚偽の申告」をして無実の男性を陥れたらどうなるのか
実際にした、していないに関わらず、痴漢容疑で現行犯逮捕された場合、ほぼ有罪になるといわれている痴漢。犯人扱いされた男性の側が無罪を主張するのが難しいという状況もありつつ、女性の側が、意図的に、あるいは完全な勘違いで、「痴漢を受けた」と虚偽の被害申告をするという行為もあるようです。
また、虚偽の痴漢申告を、人と共謀して、実際には痴漢をしていない男性に対して、「私は見ました」と虚偽の証言をして痴漢の冤罪を成立させるという悪質なケースもあるようです。
(もちろん、これらは女性が男性に行う場合に限りません。性別に関わらず、虚偽の申告、虚偽の証言を行った場合、についての案件です)
実際には痴漢されていないのに、痴漢があったと虚偽の被害申告をしたり、あるいは虚偽の証言をした結果、痴漢をしたと疑われた人が逮捕・起訴され、場合によっては有罪判決を受けてしまった場合、痴漢の虚偽申告をした人、虚偽の証言をした人は何らかの責任を負うのでしょうか。(powered by シェアしたくなる法律相談所)
刑事上の責任について
まず、人に刑事処分を受けさせる目的で、警察等に虚偽の告訴等をした場合には、虚偽告訴罪(刑法172条)が成立する可能性があります。
次に、虚偽の被害申告によって、加害者とされた人が逮捕・起訴されたり、有罪判決を受けた場合、その人の社会的評価を低下させたと言えますので、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立する可能性があります。
さらに、虚偽の被害申告によって、警察等の捜査機関が捜査を開始したような場合、「偽計」を用いて、警察等の「業務」を「妨害」したと言えますので、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性があります。
民事上の責任について
虚偽の被害申告によって、加害者とされた人の名誉等が侵害されたと言えますので、虚偽の被害申告をした人は、不法行為(民法709条、710条)に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。
虚偽の証言をした人の責任について
刑事裁判あるいは民事裁判において被害者側の証人として出廷し、実際には痴漢を見ていないにもかかわらず、加害者とされた人が痴漢した旨証言した場合、その人には、名誉毀損罪あるいは偽証罪(169条)が成立する可能性があります。
いずれにせよ、虚偽の申告、虚偽の証言は、それなりの確率で犯罪として取り扱われる可能性があるわけですね。くれぐれも、このようなことはしないようにいたしましょう。
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*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)