働き方

「親睦会費」で月5千円を給与から天引き…これ合法?

投稿日:2022年12月1日 / by

望んでもいない経費を、強制的に給料から引かれるのって違法じゃないの?

「親睦会費」名目で毎月給与天引きになっているのは違法?
正社員として会社に勤務するWさん(20代・女性)から弁護士さんへ、切実な相談がありました。異動した先の部署が、給与から親睦会費と称し、5000円を天引きしてくることが許せないというのです。

Wさんはシングルマザーで、仕事が終わると保育園へお迎えに行くのが日課。金銭的にも苦しく、親睦会など参加できるような状況ではないため、会社に対し返金を求めました。

「返金できない」と断られる

ところが会社の答えは、「親睦会費は忘年会社員旅行の費用に回しているので返金できない。そもそも参加できないあなたが悪い」という信じ難いもの。

「ならば他の部署に行くから返して」と訴えますが、「異動しようが辞めようが返せない」とけんもほろろに断られてしまいました。

Wさんはもう諦めるしかないと考えていますが、「本来給与からの天引きは違法ではないのか?」と憤りを隠せません。実際のところ、このような措置は法的に許されているのでしょうか?

髙田総合法律事務所の髙田英治弁護士に見解を伺いました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

天引きは違法ではないのか?

(髙田弁護士)「会社が、親睦会費などの名目で給与の一部を天引きして支給しているケースはよく見られます。しかし、会社は、従業員に給与を全額支給しなければならず、給与の一部を差し引いて支給することはできないのが原則です(労働基準法24条1項)。

したがって、会社が、親睦会費を給与から天引きすることも、原則として労働基準法違反になります。もっとも、親睦会費を給与から差し引いて支給する旨の労使協定が締結されている場合には、例外的に、会社が親睦会費を給与から天引きしても労働基準法違反にはなりません。

なお、労使協定の締結により、親睦会費の天引きが労働基準法には違反しなくなったとしても、それだけで直ちに、雇用契約上も天引きが適法といえるわけではありません。雇用契約上、親睦会費の天引きが適法といえるためには、別途就業規則等に親睦会費を天引きする旨の規定が定められているか、従業員の合意を得ることが必要です。

今回のケースでも、就業規則等に親睦会費を天引きする旨の規定や従業員の合意があり、かつ、労使協定も締結されているという場合には、会社による天引きは特に問題ありません。

しかし、それ以外の場合、会社が親睦会費を給与から天引きすることは違法であり、会社は、親睦会に参加できなかった従業員からの返金にも応じなければなりません」

労使協定や就業規則の確認を

就業規則等に天引きする旨の規定があるか従業員の合意があり、かつ労使協定も締結されている場合は許されるとのこと。

しかしそれ以外の場合の天引きは違法で、参加できない場合は返金する義務が発生するようです。

Wさんは、まず労使協定締結の有無や就業規則の確認から始める必要がありそうですね。

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*取材協力弁護士: 髙田英治(髙田総合法律事務所)
企業の顧問弁護士業務をメインとしつつ、相続・離婚・交通事故等の個人に関わる法律問題も幅広く取り扱う。

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)


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