働き方

未払いのサービス残業代を取り戻すための対処法とは

投稿日:2023年3月9日 / by

残業をしているのだから、その分の残業代はきっちり取り返したい!

多すぎる仕事を片付けるために残業しないと仕事が回らない! しかし、最近の日本の経済状況もあって、会社側も残業代をまともに支払う余裕がなくなっているところは少なくありません。

「うちの会社、残業代は30時間までだから」「残業代など存在しないから」と一方的に決められ、労働者は会社組織で生きていくため、残業代が支払われないまま残業をこなす「サービス残業」が従前から当たり前のように行われています。

この「サービス残業」という言葉、すっかり定着していますが、そもそもこれって法的に許されるのでしょうか? 労働問題に詳しい弁護士法人プラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士にお訊きしました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

未払いのサービス残業代を取り戻す方法

そもそもサービス残業は違法なのか?

(梅澤弁護士)「サービス残業は労働基準法37条1項に違反しており違法です。もっとも、労働者が支払われるべき割増賃金債権を全く客観的に、完全に任意と呼べる状況下で放棄した場合には、支払わないことが違法とはなりません。しかし、このような状況は実務的にはほとんど認められないでしょう。」

残業代を自ら「社長の心意気に惚れました! タダでいくらでも残業します!」「ありがとう!」ガシッと抱き合う二人…そんな話は通常の会社でそうそうあることではありませんね。

ちなみに、労働基準法では32条において、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」「(中略)休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはいけない」と定めています。

簡単に言うと、1日で8時間を超えるとその先は残業となるわけです。

残業代が契約どおりに支払われていない場合や、全く未払いになるサービス残業を強いられている場合は、所轄の労働基準監督署に駆け込んで「労基法違反」を訴えましょう。割増賃金未払いについては、弁護士が所轄する問題ということになります。

労基署や弁護士のもとへ駆け込むときに用意したいもの

さて、ではサービス残業をしたことを示す証拠として、何を用意すればいいでしょうか。サービス残業の場合、一度タイムカードを押して記録上は退社したことにしてから仕事の続きをするケースが多くあります。

(梅澤弁護士)「タイムカードは就労時間の証憑の代表的な位置づけとされています。したがってこれを覆すにはより信用性の高い客観証拠が必要です。例えば、会社PCのログイン・ログオフ時刻、会社の入退室記録、交通ICカードの利用記録、会社PCのEメール送信時刻、また毎日機械的に付けている日記の記録等があると思います。」

この“定型的・機械的”に作成される記録という点が重要です。ICカードなどで入退室管理をしている会社に勤めているなら、しめたものともいえるかもしれません。

残業賃金の計算方法は「労働基準法施行規則第19条」に定められています。文字で書かれているため、若干わかりにくいのと、労働と認められない行為もあったりしますので、記録を揃えてから弁護士さんや労働基準監督署でガッツリ計算してもらうのが正攻法です。相談に行くことで、支払いに向けて道筋が見えることもあるからです。

年俸制でも残業代は支払われる!

「自分は年棒制だから関係ないや(笑)」と思っている人も、実は大いに関係があるんです!

(梅澤弁護士)「年俸制と割増賃金の問題は全く別です。よくある誤解ですが、“年俸制を採用している=割増賃金を支払う必要がない”、ということではありません。年俸制であっても、法定労働時間を超える労働を行っていれば、賃金単価に基づく割増賃金が別途発生します。」

なんということでしょう! 年棒制でも法定労働時間は適用されるのです。

(梅澤弁護士)「年俸制でも月給制でも、賃金額は契約によって定まるものであり、仕事の内容や質で決定するものではありません。したがって、『自分は会社にとても貢献しているのでもっと給料が払われるはずだ』という主張は、法的には意味がありません(他方、年俸制の下でも『残業をして割増賃金が発生している』という主張は法的に意味があることは上記のとおりです)。」

ここはスポーツ選手と会社員のいちばん違うところかもしれません(細かい費用やボーナスなどもあるにせよ)。

年棒制でバリバリ働いている方は翌年の賃金交渉で妥当な額を勝ち取るか、それとも労働基準法にのっとって、正当な労働報酬を選ぶか、それとも両方いただくかを検討できることを覚えておきましょう。

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*取材協力弁護士:梅澤康二(弁護士法人プラム綜合法律事務所。東京都出身。2008年に弁護士登録。労働事件、労使トラブル、組合対応、規定作成・整備などのほか各種セミナー、労務問題のリスク分析と検討など労務全般に対応。紛争等の対応では、訴訟・労働審判・民事調停などの法的手続きおよびクレーム、協議、交渉などの非法的手続きも手がける。M&A取引、各種契約書の作成・レビュー、企業法務全般の相談など幅広く活躍。)

*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。)


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