働き方

妊娠して会社業務ができなくなる女性社員は「無責任」か

投稿日:2023年3月16日 / by

「妊娠をした女性労働者」の就業機会・待遇は、しっかり法律で守られています

現代の日本では、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法という法律があり、妊娠、出産、育休等の事情を理由として不利益な取扱いを行うこと(マタニティハラスメント)は、違法と定められています。

男女雇用機会均等法は、雇用の分野における男女の均等な機会・待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中および出産後の健康の確保を図るための法律です。
育児・介護休業法は、労働者が子の養育や家族の介護を行いやすくするための法律です。

これらの観点から見れば、女性社員の妊娠が「無責任」かどうかは、もう、はっきりしています。(powered by シェアしたくなる法律相談所

妊娠して仕事ができなくなる女性社員は無責任か

不利益取扱いの理由としてはいけない事

「不利益取扱い」の理由としてはいけない事としては、妊娠したこと、出産したこと、妊婦健康診査を受診していること、産前あるいは産後の休業を請求したり取得したりしたこと、あるいは「妊娠を理由に軽易な業務への転換を請求したこと」等も含まれます。

さらに、つわり・切迫流産等により仕事ができなくなったり労働能率が低下したこと、育児時間を請求したり取得したりしたこと、時間外労働・休日労働・深夜労働を拒否したこと、育児休業を請求したり取得したりしたこと、短時間勤務制度を利用したこと、子の看護休暇を取得したこと等も含まれます。

事業主は、これらの事情を理由として労働者を不利益に取り扱うことは許されません。

不利益取扱いの具体例

「不利益取扱い」の例としては、解雇すること、雇止めすること、契約更新回数を引き下げること、退職を強要すること、正社員から非正規社員への契約内容の変更を強要すること、降格すること、減給すること、賞与について不利益に算定すること、不利益な配置変更を行うこと、不利益な自宅待機命令を出すこと、昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行うこと、仕事をさせないこと、雑務ばかりさせるなど就業環境を害する行為をすること等があります。

事業主は、妊娠、出産、育休等を理由として、こうした不利益取扱いをすることは許されません。

違法となるマタニティハラスメントを行った場合、事業主は、行政指導を受けたり、事業主名を公表されたりすることがあります。また、被害を受けた労働者から損害賠償を請求されることもあります。

これらの法律の視点から見ても、労働者が妊娠して仕事が以前のようにはできなくなることが「無責任だ」などという評価が、まったく的外れであることは明らかです。

マタニティハラスメントは、日本の社会において未だ完全にはなくなっていないのが悲しい現実です。今一度、マタニティハラスメントを行っていないか、されていないかどうかについて意識し、考えてみてはどうでしょうか。

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*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)


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