
天引き多過ぎで給与が「マイナス」に…こんなことアリ?
会社を退職した際に“休業”扱いとなり、その休業控除が積み重なって…
「給与がマイナスになる例を晒す」と題されたブログ記事を目にしたことがありました。その方が退職された時の、会社の給与明細が画像でアップされたブログ記事でした。
差引支給額は「マイナス96,158」となっていて、振込支給額の欄には「0」と書かれているという、普段目にしない給与明細となっています。
実は、休職期間中でも社会保険料や住民税等の控除項目は、変わらず発生するため、給料がマイナスになる可能性はあります。
しかし、上記の例は、会社都合の休職のために休業手当が発生する場合(平均賃金の60%が支払われる場合)であるにもかかわらず給与がマイナスになるという珍しいものとなっています。
今回は、このような給与規定(就業規則)の定めが違法でないかについて解説したいと思います。(powered by シェアしたくなる法律相談所)
基本給から平均賃金の100%を控除することは違法の可能性が高い
上記記事の会社では、基本給からいったん平均賃金の100%を控除した後に平均賃金の60%を支給するという方法により休業手当を支給しています。
平均賃金には残業代や通勤手当も含むため、基本給-平均賃金の100%は大抵の場合マイナスになりますから、この会社は、実質的には平均賃金の60%を下回る金額しか支給していないことになるわけです。
したがって、「休業手当を支給する場合においては基本給から平均賃金の100%を控除した後に平均賃金の60%を支給する」旨の給与規定(就業規則)は労働基準法違反の可能性が高いといえます。
なお、そのような給与規定の定め自体がない場合には、会社が平均賃金の100%を控除できる根拠自体がないわけですから間違いなく違法です。
支給額に納得がいかない場合はどうすればよいか
「まずは最寄りの労働基準監督署に相談・申告に行きましょう」というのが最初に出てくるアドバイスです。但し、労基署が動いてくれないこともありますし、会社のほうが呼出しを無視するようなケースでは実効性がありません。
とくに、今回のように微妙なケースでは労基署が動かないことが多く、実際に今回のブロガーの方も労基署では違法でないと言われたようです。
付加金請求(労基法上、未払金と同額の金銭の支払いを使用者に請求できます。)の関係上、休業手当や未払給与の請求の場合には、労働審判ではなくいきなり民事訴訟を提起したほうがよい場合も多いので、請求できるか微妙なケースでは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談する場合、無料~1万円程度で相談できますので、「弁護士を付けても元が取れるか否か」の相談だけしてみるのもよいと思います。
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*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)