
線路内侵入、駅員に怒号…撮り鉄のマナー違反は違法か
「マナー違反」はときどき報道されているが、法的にはどうなっている?
通勤や通学など日常で使う機会が多い電車。利用している方の多くは他人に迷惑をかけないように配慮していると思いますが、公共性が高い場所ということもあり、ちょっとしたマナー違反でも目立ってしまうようです。
今回は、「撮り鉄」と呼ばれる、車両や駅などの鉄道施設を写真やビデオに収めるために、駅構内や沿線でカメラを待ち構えている鉄道ファンのマナー違反行為に関して、違法かどうか解説していきます。
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(思い通りの写真を撮りたいがために)電車の運転士に向かって「もっと前にすすめ!」と怒鳴る
威力業務妨害罪(刑法233条)に当たると考えます。威力業務妨害罪は、人のお仕事を保護するために犯罪とされていますが、威力を用いて人の業務(お仕事)を妨害した場合に成立します。
ここで「威力」というのは、人の意思を制圧するに足りる勢力を用いることとされていますが、要はお仕事を躊躇させるような行為をあからさまに行うことをいいます。
電車の運転士に向かって「もっと前にすすめ!」と怒鳴ることも「威力」に当たると考えられるわけです。威力業務妨害罪に当たる場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」で処罰される可能性があります。
(他の乗客に迷惑がかからないよう)撮影行為を制止した駅員に対し、名指しでクレーム
こうした行為も、クレームの方法や程度によっては「威力」に当たる場合もあると思います。その場合、威力業務妨害罪が成立すると考えます。
ロープを切断して線路内に立ち入る
そこまでしてしまう例は多くはないかと思いますが、万一、ロープを切断する行為が発生した場合は、器物損壊罪(刑法261条 「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」)が成立しますし、線路内に立ち入る行為については鉄道営業法37条違反・建造物侵入(刑法130条前段 「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」)・威力業務妨害罪が成立し得ると考えます。
踏切等に三脚を設置する
こうした行為についても、三脚を設置した位置によっては鉄道営業法37条違反・建造物侵入罪が成立するでしょうし、設置の仕方によっては鉄道のお仕事を妨害しかねませんから威力業務妨害罪が成立する場合もあるかと考えます。
鉄道ファンによって地域が取り上げられて活性化する等は望ましいことですが、運転士さんや他の乗客の迷惑にならないように各自あるいはファン同士で心がけていただきたいと思います。
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*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)