働き方

自動運転がもたらす働き方の変化

投稿日:2013年1月25日 / by

運転手が要らない自動車

~近未来ワークスタイル検証~

運転自動化で変貌する働き方

2012年、グーグルがスマートカーとして自動運転自動車を発表した。5年の歳月、そして22万キロにおよぶ走行実験を経て公開された“グーグルカー”は、車を無人で運転できる時代がすぐそこまで来ていることを証明した。日本でもITを駆使したスマートカーの研究は進んでおり、運転の概念が一変する可能性を秘める。瓦版では、自動運転の実現により変化する働き方や職業について、シミュレーションしてみた。


【通勤】

朝7時。あわててガレージに駆け込んだビジネスマンが、マイカー乗り込むやいなや目的地を運転席付近の小型スピーカーに告げる。「到着予定時刻は7時30分です」。最短ルートを選択した“スマートカー”は、寝坊したビジネスマンの状況を把握したかのようにいつもより20分以上早く到着できるルートを検索し、スピード調整をして、家を出発。ビジネスマンは、社内で服を着替え、朝食を済ませ、プレゼン資料に目を通し、重要な朝会議に備えた――。

ロボカー

研究開発用プラットフォーム、ロボカーPHV

<ポイント>日本のビジネスマンにとって、通勤は苦痛であり、極力なくしたいことのひとつといえる。マイカー通勤は魅力だが、事故や渋滞のリスク。なにより運転中は、何もできないという問題で賢明とはいえない。ところが、自動運転なら、全てが解決する。トラブルは情報取集により事前に回避。運転する必要がないため、移動中に仕事の準備にもとりかかれ、有効に時間を活用できる。自宅から目的地までの移動時間が、無駄な時間から一転して生きた時間に転換でき、生涯換算では膨大な時間が捻出される。誰もがドライバー付の社長気分で出社できるわけである。

【タクシー】

「行先はどちら?」。「目的地までは20分です」。「料金は1,200円です」。乗り込んだ男が、ゴージャスなシートで言葉を発するとすぐさま的確に答えが返ってくる。視線の先には誰もいない。あるのは小型のスピーカー。20XX年。有人タクシーにとってかわった無人の“スマートタクシー”は、どの車両も優秀なドライバー並みの的確なドライビングと土地把握能力でスイスイ移動。顧客に一切のストレスを与えることなく、その役割を果たしている。

タクシー業界はどうなる?

<ポイント>タクシーの問題の第一はその価格。交通手段が限られている際には非常に便利だが、それにしても高すぎる。しかし、スマートカーなら無人となるため、リーズナブルな価格が期待できる。さらに、ドライバーによって差異のあるサービス品質も“ロボット化”で均一化され、ハイクオリティなサービスが確実に受けられる。スマホと連動することで、呼び出しも支払いもネット経由で、待ち時間さえ最小化できるだろう。

【深夜バス】

大阪に勤務する会社員が、東京に出張が決まった。リニアモーターカーなら1時間弱だが、料金が10分の1の夜行バスを利用。フルリクライニングのシートで熟睡し、目が覚めるころには東京まであとわずかだった。双方向システムを活用した情報収集などで渋滞にはまることもなく、揺れや急ブレーキもなく移動中は終始快適で疲労はゼロ。帰路も浮いた交通費で東京の夜をしっかり楽しんでから夜行バスを利用することにした。

ターミナルを出発する深夜バス

自動運転は深夜バスに革命を起こすのか?!(写真はイメージ)

<ポイント>格安の深夜バスは、出張族にはありがたいが、ドライバーにとっては激務。実際に過労が原因とみられる事故も発生しており、事故リスクの不安はぬぐえない。スマートバスは疲労知らずのオートドライブ。事故リスクが極小な上に、なによりさらに価格を下げることだって不可能ではない。人件費が浮く分を価格に反映させ、さらにソフト面でのサービス低下をハード面の設備充実でカバーし、いいことづくめの次世代の交通手段のひとつとして期待できる。

自動運転が切り開く未来図

自動運転が切り開く未来がもたらすメリットは、想像以上のものがある。運転が趣味、という人にとっては醍醐味をそがれる思いかもしれないが、上記シミュレーションはあくまで運転時間の有効活用や自動運転がもたらすメリットについての話。経済効果としても相当なものが見込めそうだ。

それぞれの業界に影響が出てくる

本格普及ならドライバーの職にもろに影響

「働き方」にフォーカスするなら、自動運転にも問題がないわけではない。なぜなら、スマートタクシーは、タクシードライバーの職を奪い、スマートバスは深夜バス運転手の職を侵食する。運送ドライバーにも影響は及ぶだろう。通勤での活用も、その普及次第では、鉄道関連の職を間接的に圧迫する可能性も否定できない。自動化やロボット化は、便利さの反面、常に人との共生の部分で問題を抱えている。もっとも、そうした側面ではなく、そのことにより生じるメリットによっていかに働き方を快適にし、新しい産業を生み出すかに目を向けることが、技術の進展と人類の正しい付き合い方であることはいうまでもない。

自動運転実現Xデーはいつ?

どこまで自動化できるのだろうかでは一体、そのXデーはいつになるのか。かつてならSFの世界の話、というレベルで語られがちなテーマだったが、実は自動運転はもうすぐそこまで実現できるレベルにまで技術が進歩している。双方向によるマイコン制御の安全運転支援や渋滞、事故リスク回避はすでにほぼ実現。無人のグーグル自動車が、一部の州限定ながら公道を走ることはすでに認められている。日本でもクラウドとビッグデータを活用した研究開発用の実験車両が、自律走行を実現している。実用化までには、さらなる安全面の追求、ハード面の充実、法整備など、まだまだ追究の余地はあるが、今後10年内には、何らかの形で自動運転カーがデビューすることになるのは確実だろう。

 

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