
【瓦版 書評】ビジネスマンは35歳で一度死ぬ 鉢嶺登 (著)
ビジネスマンの賞味期限は35歳
ダイレクトマーケティング業で世に新しい広告手法を放った株式会社オプトの社長:鉢嶺登氏によるビジネス書である。タイトルにある通り、35歳は転職の限界とも言われ、そのときまでに培ってきたことが、今後の人生を大きく左右する。自分が、どんな能力を持ちそのことによって何ができるのかを言えるか言えないかが、ビジネスマンとしての明暗を分けるのだ。
35歳まで、なんとなく生きていた人間は、その後も同じようになんとなく生きていくのだろう。しかし、自分のキャリアプランをきちんと考え、積み重ねてきた人間は、次のステップを見極め、着実に進んでいけるだろう。
時代は変わり、年功序列や年次昇給に期待が持てなくなっている。自分の地位や、自分の収入は、自分で確保していく力が必要になる。いまだに大企業では年功序列や退職金などといった古い制度が適用されてはいるが、それもいつ破綻するかわからないのが現実である。
この書には、35歳までにこの移り変わりの激しい社会の中で、生き残る力をつけておくべきだということと、大企業病に掛かり、ダラダラと働いている人間は生き残ることができないということが、強く書かれている。
鉢嶺氏が語る、“35歳までに持つべき七つの力”
1) ゴールをつくる力
目標設定の大事さを語ってくれている。大きな目標を立てて、そこに向かうための小さな目標をたくさん立てる。それが一歩ずつ踏み出していくための力だという。ゴールは自分で定めなければ意味が無い。そして、自分でそこに近付くためのシミュレーションをするのだ。
2) リーダーの力
これからのビジネスマンに必要なのは、人をまとめる力である。大人数少人数に関わらず、人をきちんと取りまとめてこそリーダーとしての素質が見極められる。リーダーになるためには、経験がものを言う。そして、リーダーというのは誰かから指名されるものではなく、自ら率先してリーダーになっていかなければならない。
3) 伝える力
人を動かすためには、熱意が必要であり、まずはそれを伝えることが重要である。自分の中の本気度を熱意に変えて伝えるのだ。自分の意見、自分の主張を相手に理解して貰わないと、そこから先、逆に意見を貰ったり、賛同を得たりすることはできない。
4) 読書の力
鉢峯氏は自己投資を惜しむな。と書の中で語っている。一番楽で、一番お金の掛からない自己投資、それは読書である。読書をすることで、いろいろな体験を知ることができるのだ。もちろん、自分が取り入れた体験をどのように生かすかは自分次第である。
5) 失敗の力
失敗はすればするだけよいと鉢峯氏は語る。失敗は最高の経験になるからだ。一番いけないのは失敗を恐れて前に進まないこと、そして、一度した失敗を繰り返さないことである。経験に勝る成長はない。そのためにはまずトライしてみて、失敗したら軌道修正する力が必要なのだ。まさにトライアル・アンド・エラーの精神である。
6) 貢献の力
自分が行っている仕事が、何かの役立っているかを考え直すことが必要である。貢献の力とは、社会や日本という国に、自分が仕事をすることで貢献できているかを推し量る力である。お金稼ぎを目的とした仕事では、そのうち立ち行かなくなる。貢献しているからこそ、需要があり、需要があるところに対して貢献する力が必要なのだ。
7) 肉食の力
一つの物事が成功したからといって、いつまでもそれだけで仕事としてやっていけるとは限らない。新しいことに挑戦する、新しい獲物を見つける。貪欲に思考し、行動することが肉食の力である。自分を売り込む力、発言する力、前に前進する力すべてが肉食でなければなされないことである。
このほかにも、「語学力」と「ネット力」は当然身につけておかなければいけないと、鉢嶺氏はいう。これからの社会で必要なのは、グローバルに対応した語学と、インターネットを活用した情報収集・処理能力であるのは火を見るより明らかである。
力は蓄えるだけではなく、使わなければ意味が無い
この力さえ養うことができれば、どんな時代が来ても生き残れると鉢嶺氏は教えてくれた。若いビジネスマンへのバイブルに、そして、既に35歳を過ぎたビジネスマンにとっても自分自身を省みることができる書物として 受け入れられるはずである。
三十代になれば二十代のときに培ってきた能力を、どうやって会社や事業に行かせるかを考えていかなければならない。移り行く時代の中で、どうか自分自身の能力を発揮した仕事ができるようになっていって欲しい。
本を読んだだけで、判った気になってはいけない。書物を手に取り、読了した時点から、実践を繰り返さないと、ドンドン人は忘れてしまう。まずは、自分にできること自己投資から進めてみてはいかがだろうか。