働き方

次世代のシニア活用は、下山から小山への“登山”

投稿日:2015年6月25日 / by

シニアの潜在能力をどう引き出すべきなのか…

登りの先には空が見える。だからやる気も湧いてくる

登りの先には空が見える。だからやる気も湧いてくる

頂点を過ぎた高齢人材に新規事業を持ちかけるのは無謀ではないのか…。いや、十分な経験と知識をもってすれば、不可能ではない。どちらが正解なのか。もしかすると、どちらも正しいのかもしれない。だが、確実にいえるのは、肉体は衰えているということだ。そうした状況では気力も十分にある方が難しいかもしれない。

(株)ユーエスエスで、突如、與良剛社長から新事業案の提出を求められたベテラン社員、斧靖彦氏は、困惑しながらも必死に知恵を絞った。だが、脳みそを絞り切っても、要求された案を十分に出すことはできなかった。自分でも情けなかったが、現実だった。

最終的に斧氏は、自らの体験をビジネスに落とし込んだ案を提案し、認められた。斧氏の熱い思いを與良社長が受け止めた格好だ。シニア世代での起業は、学生の様な爆発力も斬新性もない。だが、その内容は斧氏が社会人人生で通ってきた道そのもの。なにより、今後の社会でのニーズが見込めることが“合格”の決め手となった。その一方で、もう一人、同様の状況にいた先輩のシニア社員は、案が通過しないまま、最終的には会社を去った。

いかにしてやる気スイッチをオンにするか

2人の分岐点にはなにがあったのか。斧氏は子供がまだ就業していないという事情がある。とはいえ、先輩社員が悠々自適な毎日を送るとは言い切れない。斧氏はいう。「私も辞めちゃおうかと思いました。でも、なんだか悔しかったんです。このまま終わるのが…」。なにより、斧氏を奮い立たせたのが、與良社長のひと言だ。「稼ぎましょうよ」。リストラ通告でなく、第二の人生の幕開け宣言。この言葉で斧氏の闘志に火がついた。

あくまでも会社に残った上での新規事業。シニア人材の活用という観点からみれば、このカタチには大きな意義がある。一つは、企業がシニアをまさに再利用できること。そしてもう一つは、シニアが変わるチャンスに出会えること。さらに、離職後に起業するようなリスクがない点だ。

企業にとって、シニア人材の活用は、必ずしも「活性化」とは言い難い。だが、新事業を生み出すことで一転、その存在価値が、触媒の様に企業に活力をもたらすものへと再浮上する可能性を秘める。これまでのキャリアを活かしつつ、既存でない事業開発に取り組むことで、潜在的な能力が引き出されることにもなる。

単にベテランというだけで、雇用を延長するだけの“下山スタイル”から新たな小山への“登山”。下るという考えからの脱却を視野に入れている点で、與良社長の挑戦は次世代型であり、イノーベーティブだ。今後の展開が注目される。

第一回→ シニア人材をスムースに活用する妙案はあるのか

第二回→ シニア社員の定年以降をどう考えるのか…

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