働き方

生涯現役が必ずしも悲観材料でない意外な事実

投稿日:2015年10月5日 / by

理想的な生涯現役の極意とは

ws1中高年層のリストラが目立つ一方で、年金問題もあり、経済的には出来るだけ長く働き続けなければならない厳しい時代となっている。早期退職か生涯現役か…。一般的なビジネスパーソンにとって、その選択は、もはや自ずと後者へ傾きつつある。ならば、あえて生涯現役ライフを謳歌しなければ死んでも死にきれない…。前を向き、前進するための理想的な生涯現役の極意を探る。

定年後も働き続ける場合のいくつかの選択肢

大企業のリストラで多くの中高年が退職の憂き目にあっている。今後も、その規模はともかく、こうした動きが途切れることはないだろう。問題は、そうしたことにナーバスになり過ぎることだ。理不尽な処遇に愚痴の1つも言いたくなるだろうが、確実にいえることは、働き続けなければ、老後の安泰はないということだ。

bsPAK85_minnashitamukiesk20150107071348シニアが働き続ける道は大きく4つある。(1)いまいる会社で働き続ける。(2)キャリアを生かし、別の会社へ転職する。(3)起業する。(4)全く関係のない分野へ転職する、だ。年齢的には、(1)が理想的かもしれない。(2)は、能力があれば可能性はあるが、うまくいく人が限られているのが現実だ。(3)は自由はあるがリスクが高い。(4)は自信がなかったり、プライドが許さないという人が多いかもしれない。だが、60歳以降なら、(4)が一番しっくりいくかもしれない。

理由は単純だ。人口減少により、人手不足が進行しており、特に飲食や介護などの分野では、シニア層をターゲットにした、働きやすい労働形態の求人が急増しているのだ。週三勤務や6時間労働など、シニアが無理なく働き続けらる条件が整えられている案件が増えている。職務内容は主に接客のため、ある程度の慣れは必要だが、特別なスキルがいらない点もポイントだ。全くの異業種になるとしても、割り切ってしまえばむしろ新鮮で、モチベーションの上げづらい職場で細々よりもよほど充実した毎日が送れるだろう。

シニア仕様の労働条件が増大する労働市場

bsYOTAKA85_shijisuru15121715シニアからの再出発で何より気になるのは人間関係だ。(1)のように会社に残る場合には、年下の上司、さらにいえば、かつての部下が上司になることも珍しくない。これは本人はもちろん、上司となる人間にとっても微妙といわざる得ない。こうした関係を仕組みで解消する企業もある。タニタは、関連会社として派遣会社を設け、退社したシニア社員を派遣登録。キャリアをリセットした上で、派遣社員として、古巣で勤務してもらう。このワンクッションにより、上下関係が派遣会社によって分断されるため、互いに割り切って業務上のやり取りができるというワケだ。

働き続けるにしても、自分のペースで働きたい、というシニアも多いだろう。(株)コミュニティセンターは、そうしたシニアを対象に、自由にシフトを選べる仕組みを整備し、多くの登録者を集めている。シニアに働きやすい条件の中でもかなり、理想的なものといえるかもしれない。仕事はマンションの管理業務。特別な経験が不要な点も支持を集める要因となっている。希望出勤日は、2か月前に申請し、同社がそれに応じた仕事を探し、斡旋する。1週間働いて2か月休むといった通常の会社では不可能なシフトも可能だ。

「無理なく働き続けてもらう上でマンションの管理業務は非常にシニア適した仕事と考えています。ある程度の人生経験が必要で、重労働でなく、コミュニケーションもある。そして収入まで得られる。セカンドライフを充実して過ごす上で、理想的な仕事だと思っています。これによってシニアの社会参加と労働市場開拓を図っていきたいですね」と同社の菅利恵社長は説明する。

登録者には大企業出身者もおり、肩の力を抜いて、楽しみながらもやりがいを感じ、働いているという。安倍政権は「1億総活躍時代」を宣言したが、人材不足を背景にシニアの働きやすさに配慮した案件は増大。定年を過ぎてなお働き続けるというみじめなイメージはなく、むしろ生き生きマイペースで働ける環境が整いつつある。

いくつになっても働き続けることで得られるもの

実際、歳を重ねても働き続けることが、人生を豊かにし、健康的でいられるという研究結果もある。登録者が軒並み元気なことに着目した菅代表が、偶然か必然かを確認すべく、依頼した調査で明らかになった。

働き続けるシニアの健康を調査した星教授

働き続けるシニアの健康を調査した星教授

登録年数で比較すると、登録1~2年の人に比べ、3年以上の人が主観的健康感が高い傾向がみられた。同様に3年以上登録人は、1~2年の人に比べ生活に満足している傾向だった。また、マンション管理業務での喜びについて、「人との触れあい」を挙げた人が主観的健康が高い傾向がみられた。つまり、マンション管理業務において、登録者はやりがいを持ち、長く従事している人ほど、自分が健康であることを実感しているということだ。

こうした結果を受け、調査した首都大学東京名誉教授の星旦二氏は、「仕事で幸せを感じることや継続的に働くことは、健康やQOL向上に役立つ。逆にリタイアして趣味三昧となっても、いずれ不安が襲ってくる」との見解を示し、シニアが健康で長生きするためには働き続けることが効果的であると説明した。

生涯現役をスマートに乗り切るには

もちろん、誰もが高齢で働き続けられるとは限らない。その気があっても体力が衰えてしまっていることもあるだろう。やりたい仕事が見つかる保証もない。だが、だからといって立ち止まってしまうと、一気に老化が加速する。この辺りは、生涯現役時代をスマートに乗り切る上で、しっかりと頭に入れておいた方がいいポイントといえるだろう。

労働市場の高齢化は今後さらに加速し、生涯現役がスタンダードとなりつつある。いつまでも働き続けたくないというシニアがいるのは当然だが、働き続けることが、実は人生を豊かにしてくれるということは認識しておいた方がいいかもしれない。もちろん、定年後は、働かされるという受け身から卒業し、自分のペースで働くことが最優先であることは言うまでもない。それが可能なのが、セミリタイアと割り切り、仕事を吟味して生涯現役を続ける最大のメリットといえるかもしれない。

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