働き方

クラウドソーシング革命がもたらす破壊的創造 

投稿日:2013年7月16日 / by

比嘉連載第一回

世の中変えるほどのインパクト持つパフォーマンス

クラウドソーシング(CS)とは、インターネットを通じ、不特定多数の群衆(crowd)を活用すること。まだクラウドソーシングが動き始めたばかりの日本では、その多くが手軽にスキルを登録し、企業の案件と結びつける便利なネットサービス、程度の認識かもしれない。しかし、そこに秘められたパフォーマンスは、世の中を変えるほどのインパクトを持っている。

例えば、誰かが優れたアイディアを持っている、もしくは思いついたとしよう。これまでなら、同僚や知人に話して、「すごいな」と褒められて終わり。運よく、アイディアを吸い上げるシステムを持った企業に勤めていれば、具現化する可能性もあるだろうが、それとて非現実的であれば、あっさり却下される可能性が高いだろう。

クラウドソーシングの流れ

ところが、クラウドソーシングを活用すれば、そうしたアイディが日の目を見る可能性が非常に高まる。アイディアがネット上に公開されれば、本来なら接点のない技術者や投資家、企業がアプローチしてくる可能性がある。資金集めなら、大金は集まらずとも、少額の大量の個人からの資金が集められるかもしれない。アイディアの修正点を指摘し、実現へのアドバイスをしてくれる人が現れることもあるだろう。

「かつてはアイディアズ・アー・チープといわれていました。しかし今ではアイディアズ・アー・モスト・バリュアブルとなっています。いくらいいアイディアがあっても実現できなければ無価値でしたが、いまはクラウドソーシングを活用することで、アイディアさえあれば誰もがそれを実現する道が開けているのですから」と日米のクラウドソーシング事情に精通する東京工業大学イノベーションマネジメント研究科比嘉邦彦教授は解説する。

アイディアさえあれば、誰もがそれを具現化できる選択肢

技術を求めるならクラウドソーシング、資金集めならクラウドファンディング、そしてアイディアを具現化するために全面サポートするクラウドソーシングまで存在する。それはつまり、個人レベルでも夢のような開発や発明をすることがより、容易になったことを意味する。大企業に属す意味が“個人ではできないことを実現できる”から、ということならば、もはやそれは過去の話といっていいかもしれない。

<個人が自分の技能で収入を得やすくなった>、<企業は格安で高い技術を外部に容易に発注できるようなった>…。その程度の認識ならば、迫りくる世界のクラウドソーシングの波にあっさりと飲み込まれることになる。クラウドソーシングの本当のパフォーマンスは、それだけ破壊的であり、そうしたレベルをはるかに超えたところにある。

日本でも運営企業が売り上げを伸ばすなど急拡大しているクラウドソーシング。それでもまだまだ先進国アメリカには普及率では遠く及ばない。しかも、まだ、本当のすごさが、活かされているとはいえない。だが、不可逆的な世界潮流となっているクラウドソーシングの波は、静かだが確実に、日本市場にも接近している。それは、世界で起こっているクラウドソーシング革命が、同じように日本を直撃することを意味する…。

第一回 クラウドソーシング革命がもたらす破壊的創造
第二回 アメリカの事例からクラウドソーシングを学ぶ
第三回 クラウドソーシングがもたらす労働市場への影響
第四回 労使双方にメリットをもたらすクラウドソーシング
第五回 クラウドソーシングに秘められた可能性
第六回 確実に世界中に浸透するクラウドソーシング
第七回 日本型クラウドソーシングとは
第八回 クラウドソーシングによる人材育成
第九回 クラウドソーシング時代に待ち受ける現実
第十回 クラウドソーシング時代に取り残されないために…


イノベーションマネジメント研究科 比嘉教授東京工業大学 比嘉邦彦教授 プロフィール
米国アリゾナ大学から1988年に経営情報システム専攻でPh.D.を修得。以来、同大学講師、ジョージア工科大学助教授、香港科学技術大学助教授を経て1996年に東京工業大学経営工学専攻助教授に、1999年より同大学理財工学研究センター教授。テレワークおよびクラウドソーシングをメインテーマとして、組織改革、地域活性化、e-コマースなどについて研究。それらの分野における論文を国内外の学術誌や国際会議などで多数執筆・発表。企業へのテレワーク導入ガイドブックの編集委員長、テレワーク推進フォーラム副会長を含めテレワーク関係省庁の各種委員会の委員および委員長を歴任。

最新著書紹介→『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命


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