働き方

アメリカの事例からクラウドソーシングを学ぶ

投稿日:2013年7月30日 / by

クラウドソーシング先進国での事例

国家公認の巨大プロジェクトでも活用

驚異のパフォーマンスを秘めるクラウドソーシング。先進国アメリカでは、その潜在力をフルに活用し、大企業はもちろん、国家公認の巨大プロジェクトにまで活用されている。

世界的企業のIBMは、自社で不足した人材調達に、GEは商品開発に活用している。日本では現状、その利用は主に中小企業であり、大企業でもロゴデザイン程度の案件しかない。そうした実情を考えると、これら事例をみるだけでもアメリカにおけるクラウドソーシングの社会的位置づけの高さ、影響力の大きさをうかがい知れるだろう。

官においても、オバマ大統領が各省庁に積極活用を促したことから利用事例が増大。軍事車両・航空機材の開発など、国家的案件にも活用され、大きな成果を出している。NASAがアルゴリズム開発をクラウドソーシングで行った事例では、NASAの開発陣のものよりはるかに高い精度のアルゴリズムが開発され、クラウドソーシングの秘めるパフォーマンスが、満天下に知らしめられた。

「米企業の事例では、不足した人材の補てんに活用したり、プロジェクト単位で単発での活用の場合もある。状況やその能力によっては、そのまま戦力として囲ってしまうケースだってある。つまり、そうやってクラウドソーシングによって、不特定多数の人材の中から、優れた人材がピックアップされ、定着する者が出てくれば、いずれ一般ワーカーにその余波が打ち寄せることになる。そうなったときどんなことが起こるのか… 」と東京工業大学イノベーションマネジメント研究科の比嘉邦彦教授は懸念する。

クラウドソーシングの拡大が奪うもの

社員を追いやるCSクラウドソーシングの活用が定着しつつあるアメリカでは、埋もれた人材を発掘する革新的なツールとしてクラウドソーシングを有効活用し、自社の利益向上につなげている。それはつまり、もともと在籍する社員にとっては、評価の相対的な低減要因であり、お荷物要員転落への序曲に他ならない…。

米・トップランクのクラウドソーシング企業、oDesk・スワート社長は、「2020年までに世界の労働者の3人に1人はオンラインワーカーになっている」と予測する。アメリカ国内でなく、全世界の3割以上だ。その多くをクラウドソーシングが担うと考えれば、先進国アメリカで起こりつつある現実が、日本へもすぐそこまで迫っていると考えるのが妥当であろう。

ちなみにその市場規模は、現在、アメリカでは発注総額ベースで約1300億円。それに対し、日本は70億円程度に過ぎないといわれる。だが今後、日本のクラウドソーシング市場は、3年で15倍近くにまで増大するという予測もある。もはやクラウドソーシングは、不可逆な世界的潮流となり、その波を荒げている。順調に伸長を続ける日本のクラウドソーシングが首尾よく急拡大したとしても、その先に待っている現実は、とりわけ安定志向の人間には正直あまり予測したくないものなのかもしれない…。

<次回第3回(8月下旬)はクラウドソーシングの秘める恐るべき可能性>

第一回 クラウドソーシング革命がもたらす破壊的創造
第二回 アメリカの事例からクラウドソーシングを学ぶ
第三回 クラウドソーシングがもたらす労働市場への影響
第四回 労使双方にメリットをもたらすクラウドソーシング
第五回 クラウドソーシングに秘められた可能性
第六回 確実に世界中に浸透するクラウドソーシング
第七回 日本型クラウドソーシングとは
第八回 クラウドソーシングによる人材育成
第九回 クラウドソーシング時代に待ち受ける現実
第十回 クラウドソーシング時代に取り残されないために…


イノベーションマネジメント研究科 比嘉教授東京工業大学 比嘉邦彦教授 プロフィール
米国アリゾナ大学から1988年に経営情報システム専攻でPh.D.を修得。以来、同大学講師、ジョージア工科大学助教授、香港科学技術大学助教授を経て1996年に東京工業大学経営工学専攻助教授に、1999年より同大学理財工学研究センター教授。テレワークおよびクラウドソーシングをメインテーマとして、組織改革、地域活性化、e-コマースなどについて研究。それらの分野における論文を国内外の学術誌や国際会議などで多数執筆・発表。企業へのテレワーク導入ガイドブックの編集委員長、テレワーク推進フォーラム副会長を含めテレワーク関係省庁の各種委員会の委員および委員長を歴任。

最新著書紹介→『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命


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