働き方

「男性の育児休暇取得の実態に迫る」(3)

投稿日:2014年4月24日 / by

oshaburi【日本の男性育休取得が進まない5つの理由2】

今回も、前回に引き続き、男性の育児休暇が進まない日本の現状について、その理由をみていきましょう。

■その2:男女の給与バランスが悪い

あるグローバル企業の人事の方から、面白いお話を伺ったことがあります。それは、同じ企業内でも、国によって育児休暇取得率が全く異なる、という事実です。 その企業は世界各国に展開しているのですが、たとえばフィンランド、アメリカ、イギリスでは、男性の育休取得は根付いている。一方で、韓国や日本などでは普及していないとのこと。 その違いについて、その人事の方は次のように分析していらっしゃいました。 「(男性の育休は)男性が稼ぐという観念が強いところでは普及しない。女性の給与水準が高いところでは普及している」 日本では、育休中、給与を補てんする育休手当が出ます。ただし、満額ではないため給与が低い方が休暇を取得したほうが有利になります。また、稼ぎ頭の男性側が、育休取得により、もし出世コースからはずされてしまったら家計の一大事、というような感覚も根強くあるものと思います。 つまり、女性の活躍推進と男性の育児休暇取得推進は、表裏一体であることがわかります。

■その3:企業とのウェットな関係を持つ文化

男性育休が普及している北欧諸国の方々とお話していて、良く感じることがあります。それは、「企業に勤める」という感覚が、日本のそれとは異なっている、という印象です。彼らは、良くも悪くも、「ドライ」です。 企業・仕事というものは、あくまで自分の給与を稼ぐ手段であって、それ以上のものではない。企業・仕事より、家庭が大事。企業との間に、ある種の距離感があります。 一方で日本人サラリーマンと話していて感じるのは、企業への絶大な忠誠心です。企業・仕事というものは、すごく家族的で義理人情で結ばれていたり、ある種の自分の延長であったりする。(と、意識的・無意識的に思っている)。残業していることがある種のアピールになっている。会社主催イベントは断らない…。 家族のライフイベントより仕事を優先することが、ある種の美談としてとらえられる向きも以前より減ってはいるもののまだ残っているような気がします。こうした文化が、企業・仕事より家庭を優先する「育児休暇取得」に対して、ある種の後ろめたさを醸成しているのです。
第四回へつづく)
第一回:機能不全の日本の育メン事情
第二回:日本の男性育休取得が進まない5つの理由その1

◇男性の育児休暇に関する記事一覧


オンユアマーク井上氏【プロフィール】 井上幸一郎 有限会社オンユアマーク 取締役社長 2000年立教大学経済学部卒。 eラーニングベンダーにて、米国の学習管理システムのローカライズ、販売等に従事。米国民間資格の普及推進にも努める。 また、大原学園の資格対策eラーニング講座の法人販売やeラーニング管理システムの法人販売にも従事。 2005年、人事コンサルティング企業に転職し、企業研修・人事制度コンサルティングなどの営業・講師・コンサルタントなどを歴任。 2007年、3か月の育児休暇を取得。 2010年11月、「日本の人事にイノベーションを」をコンセプトに独立。 ・日本ワークライフバランス研究会会員 ホームページ:http://onyourmark.r-cms.biz/

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