
インターンシップは本当に有効か
インターンシップ増加の背景
インターンシップは学生にとって「天職」への近道なのか…。企業が、学生を一定期間受入れ、自分の将来に関する就業体験を行えるインターンシップ。社会経験の少ない学生にとって、興味ある仕事について理解できる貴重な機会となるが、本当に学生のよりよい就職にとって有効といえるのか。現状と問題点を探る。
企業のインターンシップが増加している。背景には、2016年度の新卒採用において、企業の広報活動開始日が従来から3か月後ろ倒しされたことがある。売り手市場に加え、その期間が短くなるため、新卒の獲得競争が熾烈になるからだ。
(株)アイ・キュー(本社:東京都港区、代表取締役社長:林 城)は、運営する日本最大の人事ポータルサイト『日本の人事部』( http://jinjibu.jp/ )で全国のビジネスパーソン(経営者、管理職、人事担当者 ほか)へ「インターンシップ」についてWEBアンケートを実施(調査期間:2014年8月4日~8月17日、回答社数:230社)し、その結果をまとめている。

アイ・キュー調べ
それによるとインターンシップの目的については、「会社の認知度を上げるため」が40.5%とトップとなっているが、2位は「自分が求めるタイプの学生をみつけるため」(21.4%)となっている。4位、5位も「学生のスキル・人柄を見極めるため」(7.1%)、「従来の採用とは違ったタイプの学生を見つけるため」(4.8%)となっており、企業にとって人材獲得の制度としての活用が色濃いことが分かる。
面接という形式とは違い、実際に職場を体験し、現場社員と触れ合えるインターンシップは、ミスマッチを減らす意味でもある程度の効果は期待できる。だが、同アンケートでの企業の「インターンシップの選考で重視するもの」への回答から透けるのは、面接の延長程度の位置づけという側面だ。回答のトップは「本人のやる気、意欲」(31.7%)。続いて「特になし」、「大学における専攻分野」、「面接」となっている。

アイ・キュー調べ
どうすればインターシップは“有効”になるのか
こうした“選考”を経て、学生は現場でアルバイト的に給与をもらいながら実地体験するわけだが、どうしても“お客様扱い”はぬぐえない。米国の場合、インターンは無給が常識。代わって、学生は社員と同等レベルで扱われ、入社時に必要なスキルを身につける。スキルを基準に採用が決まり、解雇ルールも緩いという違いはあるものの、「天職」という観点からは、どちらが理にかなっているかは明白だろう。
日米の文化の違いと行ってしまえばそれまでだが、若者離職率が3割という要因にこうしたことが無関係とはいえない。インターシップを利用しない理由について「マンパワー不足」、「現場に学生をケアする余裕がない」という声もあり、景気状況の不透明さの中で企業なりの事情もあろう。同時に学生側にも自分が興味ある仕事に対し、インターンシップの有無は関係なく、その扉をたたく気構えと将来を見据えたスキル磨きを学生時代にしっかりと行っておく必要はあるだろう。
学生のマインドなのか、企業の気構えなのか、大学の教育カリキュラムなのか。どこが問題というよりもの、どの側面においても大きな変革がなければ、人材獲得競争は「労多くして実少なし」、となりかねない…。