働き方

知らないと後悔する会社員のための人事知識

投稿日:2015年1月14日 / by

会社員だからこそ知っておくべき会社のルール

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(株)アジア・ひと・しくみ研究所

代表取締役

新井健一氏

アナタの会社は「健康」だろうか…。といわれても、ピンと来ないかもしれない。だが、会社員が職場でその力を最大限に発揮するには、会社が「健康優良状態」である必要があることは何となくわかるだろう。アジア・ひと・しくみ研究所で、独自ツールによる企業の「健康診断」を行う新井健一氏。“会社診断のエキスパート”である氏に、従業員ベースでも分かる会社の健康診断チェックのポイントを聞いた。

入社後にミスマッチが起こる原因

「こんなハズでは…」。十分に調べたはずなのに、なぜ就職した会社に抱いていた期待と現実のミスマッチは起こるのか。調べ方が足りない、あるいは企業側が意図的に情報を隠蔽しているのか…。その答えは両方にある、というのが正しいのかもしれない。個人のスキルに起因するケースもある一方、それ以前の問題もある。前者の場合は、本人が努力すれば解決する。だが、後者の場合、後の祭りともなりかねない。だからこそ、従業員自身が企業の健康状態を知っておいたほうがいい。

会社が不健康な状態とは

そもそも、会社が不健康というのはどういう状態をいうのか…。新井氏が企業に委託されて診断を行う場合にはまず、人材の階層を、トップ、ミドル、スタッフの3階層(カスタマイズ可)に分け、各階層に55の質問で問診する。その結果を丹念に摺合せ、上下層間のギャップを分析する。簡単にいえば、トップ(経営層)の思いとミドル(管理職層)もしくはスタッフ(一般職層)の考えや現場・職場の認識に大きな溝がある場合は、会社は機能不全に陥っており、不健康ということになる。

arai01「企業診断はこれまでに数多く行っていますが、結果をみせた際、上層部の人間に激怒されたこともあります。上層部が思っていることと現場・職場で実務に携わる層の人間の考え・認識にあまりにも溝があったんです。問診は基本選択式ですが、自由記入も用意しています。そこへうっぷんを晴らすかのように不満が書き込まれるんですね」と新井氏。どんな立派な会社にもある程度の溝はあるだろう。だが、昨今は、成熟市場で働き方も過渡期を迎え、そのきしみは大きくなっているようだ。同社では、この解析結果に優先順位を付け、企業に対し、課題解決を進める処方箋を提示する。

どうすれば従業員が会社を健康診断できるのか

では、従業レベルでも、ある程度の企業の“病気”の兆候を知ることはできないものか。新井氏は、そのポイントして、人事の仕組みの基本を理解しておくことが大切という。なぜなら、その仕組みによって、当人の意思とは無関係に、処遇が決まることになるからだ。医師が病人を診察できるのは、人体の機能や構造を理解しているから。それを考えれば当然といえる。具体的には、「等級・資格制度」、「評価制度」、「報酬制度」、「人材開発・配置制度」。この4つの制度によって、社員の処遇はフィックスされていく。

ルールを知らないことがもたらす悲劇

arai-top1「入社企業を選ぶ際にイメージは大切ですが、会社が社員にどんなキャリアをどれくらいの年数で積ませようと考え、会社がどんな仕組みで社員を評価するのかを知らないと、希望にあふれて入社しても、その希望には到底たどり着けないことを知らぬまま会社員として過ごすこともあり得ます。例えば、等級の部分でいうと、階層が細かい会社の場合、自分がやりたいことをやるまでにそれだけ時間がかかるということ。それでもいい人はいいですが、若い人にとって、やりたいことが遠い先にあるワケですから、耐えられない人は早めに他を考えてもいいかもしれません」(新井氏)。

等級が多いことが悪とはいわないが、右肩上がりの時代が終わった今、こうした階段を上ることにどれだけの価値があるのかは、熟考の余地があるだろう。会社規模を選り好みしなければ、優秀なら、若いうちから大きな仕事を任せてもらえるチャンスも少なくない。そもそも、就職人気ランキング上位企業に入れたとしても、そこで自分が何をやりたかったのか。そこに立ち返った時、所属企業は、本当にそれが実現できる場なのか。そうではないのか。そうではないとして、それに耐えられるのか…。

「何か違う」。少しでもそう感じたなら、とにかく、目をそむけず、自分と向き合うことが、理想の就業を実現する上で大切になる。(後篇に続く)


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http://ahsi.jp/index.php

【プロフィール】新井 健一(あらい けんいち)
株式会社アジア・ひと・しくみ研究所(ASIA HUMAN&SYSTEM INSTITUTE,LTD. )代表。早稲田大学 政治経済学部政治学科卒。 大手重機械メーカー入社。人事業務全般に従事する。その後、アーサーアンダーセン/朝日監査法人(現 KPMG /あずさ監査法人)入社 。組織・人事及び業務改善に関わるコンサルティング及び教育に従事。KPMGあずさビジネススクールにてシニアマネージャー、スクール長に就任する。ビジネススクール責任者として事業経営の傍ら、コンサルタント、講師業務に従事。2010年11月に経営コンサルタントとして独立。東北六県を対象としたプロジェクトに従事し、仙台を拠点に活躍。現在に至る。

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