
ママになっても仕事をつづけるスマートな働き方
基本的な3つの選択肢
株式会社ママジョブ
斎藤あや子代表
労働市場における女性の活用が企業にとっても重要なテーマとなりつつある。約6割の女性が、妊娠・出産により離職するともいわれる中、スマートに働き続ける道はないものなのか…。子育てママの再就職支援・プチ起業をサポートする「ママジョブ」を運営する斎藤あや子代表に、その心得を伺った。
正社員なら答えは明確
働く女性にとって、妊娠は大きなライフイベントなる。出産、子育てによって、離職を余儀なくされるからだ。約6割の女性が、そのまま退職するというデータもある。その選択が正しいかどうかは、各人各様だが、再就職を視野に入れているならば、答えはハッキリしている。
「正社員で働いているならば、育休などの制度を活用して、会社を辞めないことがベストです。もちろん、そうしたくても先輩ママがおらずロールモデルがいない、忙しい部署にいる場合、復帰後が大変、など障壁は多いですから簡単でないことは分かっていますが、それでも辞めない方がいいですね。なぜなら、辞めてしまうと、再就職が非常に困難になるからです。仮に子育てをする上でより働きやすい環境を目指すにしても正社員という“肩書”がモノをいい、転職にも有利に働きますから」と斎藤代表はアドバイスする。
子育てを離職し、再就職を目指すとなると、どうしても時間の融通が利くことがその条件となる。在宅や時短勤務、ノー残業、週3勤務などだ。採用する側にとっては、必ずしも歓迎すべき条件でないために、そうした条件をかなえる企業は少なく、再就職は難航を極める。だからこそ正社員ならば、少々の困難もグッとこらえ、制度を活用して残ることが、先を見据えた場合、賢明であり最適というわけだ。
収入面での問題もある。仮に条件に合った会社に再就職できたとしても、当然、高給は望めず、子供の成長とともにかさむ教育費に苦しめられることになる。一方、正社員として育休を活用し、就労を継続していれば、高給ではなくとも安定的にそれなりの収入を確保できる。
早い段階でのキャリアプラン設計が重要
もっとも、出産後、首尾よく復職できたとしても、ある程度の計画性がなければ、思うようにことは進まない。ましてや、非正規の場合、育休給付金受給に条件があるなど、妊娠が分かってからでは手遅れ、というケースもある。そこで、斎藤氏は早い段階での出産というライフイベントを視野に入れたキャリアプランの設計を提案する。
「育児後の再就職が大変なのはみなさんある程度分かっているハズです。特に非正規の場合、給付金の受給に条件もあり、満たしていなければもらえない場合もある。契約を継続されないケースも珍しくありません。にもかかわらず、多くの人が実際に妊娠するまで真剣にママとしてどう働いていくのかを考えていません。やはり、もっと早い段階で、出産のタイミングも踏まえたキャリアプランを考えておく必要はあります。それをしておかなければ、復職するにしてもスムースにいかない場合もあるでしょうし、キャリアアップを考えているならなおさら、キャリアプランの設計は重要になります」(斎藤代表)。
少子高齢化により、労働市場は今後、人手不足に悩まされることになる。その穴を埋めるのが、子育てを理由に離職した女性とみられており、国もそうした動きをサポートする姿勢を打ち出している。女性にとって、子育て中も働きやすい環境が整いつつあるだけに、その波にうまく乗るためにもしっかりと先を見据え、関連の制度をしっかりと把握し、その上で復職後のキャリアプランを綿密に設計することが、重要になるわけだ。
“プチ起業”という選択肢の現実味
正社員としてのキャリア継続や希望条件に合った再就職という選択肢の他に、子育てママには第三の復職lの選択肢として“プチ起業”という道もある。いわゆる起業ではなく、好きなことや趣味を仕事にする働き方だ。
「プチ起業の一番すぐれたところは、時間が自由になることです。子供との時間をしっかり確実に確保できるという点では、ママにとっては理想的な“再就職”といえるかもしれません。好きなことを仕事にでき、心が豊かになるのも魅力ですね」と斎藤代表は、そのメリットを語る。
“プチ起業”の落とし穴
もちろん、課題はある。プチとはいえ、起業であり、儲かることもあれば赤字になることもある。儲かるといっても多くても月に十数万円レベルであり、必ずしも安定的に収入を確保できるとは言い難いので、ちょっとしたお小遣い程度。収入をあてにするなら、ベストとはいえないかもしれない。
「自分の好きなことを活かすプチ起業ですが、勢いで始めてしまうと痛い目に合うかもしれません。実際、1~3年でやめるケースが多く見受けられます。理由は売り上げが伸びない、集客ができないというものがほとんど。もちろん、成功している人もたくさんいて、そういう人は正社員時代よりも稼いでいるケースもあります」(斎藤代表)。
“プチ起業”で成功する7つのポイント
では、プチ起業で成功する極意はなんなのか。斎藤代表は、7つのポイントを挙げる。
(1)想いと夢。時間管理と両立術。(2)値付け・数字に強くなる。(3)オンリーワンな自分ブランドを確立する。(4)居住エリアナンバーワンを目指す。(5)ホスピタリティ(6)リピータをつくる集客術。(7)積極的な異業種交流。
「7つのポイントのいずれもが重要ですが、家計をやりくりしているハズのママは意外に数字に弱いんですね。プチとはいっても経営ですから、数字はしっかり把握できないと、うまくはいきません。自分ブランドの確立は、経営者としての魅力を磨くことですから、結構重要なポイントです。なんとなく始める前に自分の魅力がなんなのか、目的はなにか、をしっかりと分析し、明確にしてからスタートすることが失敗しないために大切な要素になりますね」と斎藤代表は補足する。
今後の労働市場において、大きなカギを握る“離職ママ”。次の一歩が正社員としての復帰であれ、希望条件にあった企業への再就職であれ、プチ起業にせよ、しっかりとした計画を立てることが、非常に重要になる。なぜなら、どの道で成功するにしても、出産のタイミングを綿密にプランニングしなければ、しっかりとしたキャリアアッププランが描けないからだ。ママワーカーとしての成功への道は、ママになる前にあり――。簡単なようで難しいことだが、このことはしっかりと心得ておく必要があるだろう。
【サロネーゼ経営スクール】
ママジョブが運営・委託する「サロネーゼ経営スクール」事務局として、同スクールの運営をサポートする。同スクールは、「個人サロンオーナー」「教室主宰者」、「フリーランス講師」に必要な経営ノウハウをトータル的に学べる、唯一のママ・女性経営者専門のスクール。サロネーゼとは妻として、母として、“私らしさ”を生かし、「好き」をビジネスにしている女性のこと。これまでに100以上の卒業生を輩出している。