働き方

企業がマタハラを撲滅しないとヤバい本当の理由

投稿日:2015年3月31日 / by

イクボスにはメリットしかない

イクボスの素晴らしさを説く青野社長(左)と安藤代表

イクボスの素晴らしさを説く青野社長(左)と安藤代表

育休、育メン、イクボス…など、女性の活躍推進の声が大きくになるにつれ、そうした活動も徐々に活発化しつつある。一方でマタハラ被害も後を絶たない。さきごろ、都内で、脱マタハラを推進する団体とイクボスを先導する各リーダーが集い、イベントを開催。マタハラのない社会を目指し、ガッチリとかみ合う議論を展開した。

脱マタハラとイクボス。マタハラの諸悪の根源が、マネジメント層にあることを考えれば、両者の接近は、必然といえる。イクボスの象徴的存在として、先頭を走るサイボウズ青野慶久社長は「イクボスにはメリットしかない。働きやすくなることで優秀な人材が集まるし、離職率も下がるし、なにも悪いことない。多様性を認めつつ、風土を変えることが重要」と働く男の視点から育児参加の素晴らしさを訴える。ファザリーング・ジャパン代表の安藤哲也氏は「いろいろ問題はあるが、抜本的には人事考課を変えるのが一番効果的」と脱マタハラ実現への抜本策を提言する。

なぜ、マタハラが問題なのか…。少子化で労働人口が減少する日本。それを補てんするのは移民を受け入れない前提なら、女性であり、高齢者が最有力だ。ところが、日本ではどちらをも「普通に働けない」労力とみる向きがある。とりわけ、妊婦に対しては、そうした姿勢が強く出る傾向がある。

「普通に働くこと」。それは、まさに企業の働き方の“基準”となっている長時間労働に他ならない。体に負担のかかる妊婦は、それができない。短時間労働や急な休みが増加する。マネジメント層なら当然理解すべきことだが、厄介者のようにみてしまう。それだけ慢性的に人手が不足している裏返しでもあるが、その結果、退職を強要するなどのハラスメントが発生することは別問題。いかに労り、ケアするかが本当のマネジメントだ。

先進国でマタハラはナンセンス

脱マタハラを訴える圷氏(左)と小酒部氏

脱マタハラを訴える圷氏(左)と小酒部氏

2015年3月に日本で初めて「世界の勇気ある女性10人」に選ばれたマタハラNet代表の小酒部さやか氏。同賞を先進国が受賞するのは珍しいが、それはマタハラにおいては、日本がいかに世界に遅れているかの証明ともいえる。授賞式の行われた米国では「先進国日本でなぜマタハラが起こるのか」と繰り返し聞かれ、「日本には市民がおらず、労働者しかいない」とまで言われたという。

日本人が“働き蜂”といわれて久しいが、先進国で超高齢社会の日本が、働く妊婦をしいたげることは、少子化に拍車をかけることにもなりかねず、自滅行為でしかない。右肩上がりの時代が終焉し、それに伴い働く上でのルールが変わった以上、その枠組みに合った働き方がされなければ、歪みが生じ、企業も、そして労働者も大きな痛手を負うことになる。

「いまの日本があるのは、確かに長時間労働で頑張って働いてきてくれた人達のおかけです。ただ、残念ながらいまは、その働き方では合わなくなっている。私たちは、そのバトンを受けて、次の世代にいい形でバトンを渡す役割を担っている。だから日本からマタハラをなくす使命があるのです。いまやるしかないんです」と小酒部氏は力説する。

マタハラの実態を可視化する「マタハラ白書」を監修したダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜氏は「一件でもマタハラが起こると社内だけでなく社外にも拡散し、企業はとてつもなく大きなリスクを負うことになります」と強い口調で警告。マタハラを一刀両断にし、誰もが平等に働ける風土づくりの重要性を説いた。

マタハラNetを立ち上げ以来サポートする弁護士の圷由美子氏は「今年はイクボスで流行語大賞を狙いましょう」と力を込めたが、イクボスが当たり前の社会にならなければ、脱マタハラはない。それくらいにマネジメント層にとどまらず、男女の労働者全体が、危機感を持って大きなうねりを起こしていかねばならないほど、いまの日本は世界に恥ずべきマタハラ後進国であり、このままでは自滅に向かうことをしっかりと認識しておく必要がある。

 

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