働き方

なぜビジネスパーソンは数字に強くなければいけないのか【瓦版書評】

投稿日:2015年9月10日 / by

仕事ができるとはどういうことか

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている(新井健一:かんき出版)

儲けの極意はすべて「質屋」に詰まっている(新井健一:かんき出版)

「仕事ができる」とはどういうことだろうか。仕事が早い、仕事が正確、仕事が丁寧…どれも要素ではあっても答えではない印象だ。では、<10億円を売り上げる営業計画を見事な資料にまとめ上げる営業担当A>と<資料はいまいちだが確実に10億円の数字を売り上げてくる営業担当B>がいるとする。会社にとってどちらが評価に値するだろうか。もちろんBだ。

なぜ、この事例では優劣を判定できるのか。それは、会社の仕組みを考えれば、自ずと分かる。AもB同じ給料だと仮定する。すると、同じ人件費に対し、売り上げが0円と10億なのだから、貢献度に雲泥の差がある。人件費は、会社にとって固定費だ。固定費は、売り上げが悪ければ圧縮される宿命にある。つまり、営業職として、十分に役割を全うできていないAは、評価に値しない。

同じ数字でも意味合いが異なる2つの「数字」

ビジネスパーソンは数字に強くなければいけない、といわれる。それは、数字が明確に事実を浮き彫りにしてくれるからだ。数字といっても、プレゼンを引き締める見栄えの良い数字ではない。ビジネスのしくみを分解し、利益を現実的に弾き出す数字だ。まさに、後者を理解しているのがB、前者をマスターしているのがAだ。

Bは、いわゆる商売の極意を学生時代のアルバイトで学んだ。飲食店でバイトリーダーを務め、人員管理から売上まで任され、そのノウハウを叩き込まれた。クライアントとは、常にその時の感覚で接している。それがいいのか、距離が縮まりやすく、商談もうまくまとまる。「こいつ分かってるな」と顧客に共感してもらえ、大きな契約も結んでもらえる。

一方のAは、学生時代、サークル活動に励み、勉強は友人のサポートを受け、超効率的にこなした。要領のよさだけは磨かれたが、効率化の知識ばかりが膨らみ、実践はほとんど経験することがなかった。いつも詰めが甘く、最後には逃げられる。その差が、「0円」と「10億」。そう単純に決めつけることはできない。だが、Bが持つような数字のセンスは、これからの時代に使える人材として評価されるためには身に着けておく必要はあるだろう。

“バーチャル実践”で平易に会計を学べる一冊

この習得にはなにより実践が一番だ。だが、社会人がいまさら飲食店でバイトするわけにもいかない。その意味で、質屋を舞台に、まるでそこで実践しているように会計の基本を学べるよう構成された同書は、非常に有益な一冊といえる。この類の会計本は少なくないが、分かりやすさは出色だ。意外にも著者自身、根っからの文系で、数字嫌いだったから、というもの少なからず影響しているだろう。

“儲けの極意”を知ることにはもう一つメリットがある。自分を売り物に置き換え、その価値をしっかりと値踏みできるようになるということだ。これからの時代、会社にぶら下がっているだけでは、振り回されるばかりだ。自分の強みがなんであるかを分かっていなければ、“自立”するにもピンと外れになりかねない。一念発起して英語や資格取得を目指すのもいいが、自分のどこに、どれくらいの“販管費”をかけるのがいいのか。自分を最大化したいなら、まずは同書で“儲けの極意”をマスターすることから始めた方が、よっぽど意味があるかもしれない。

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について