働き方

完全失業率が20年ぶりの低水準は手放しで喜べるのか【瓦の目】

投稿日:2015年11月27日 / by

20年ぶりの低水準となった完全失業率のカラクリ

総務省の最新のデータでは完全失業率は3.1%(2015年10月)。1995年7月以来の低水準だそうだ。額面通りに受け取れば、いまの日本は、失業者が減っており、いいムードにある、ということになる。では、実際はどうなのか…。

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まず、総務省統計局による失業者の定義をみてみよう。「仕事がなくて少しも仕事をしなかった者のうち、就業が可能でこれを希望し、かつ仕事を探していた者及び仕事があれば、すぐ就ける状態で過去に行った求職活動の結果を待っている者」となっている。「完全」失業者となると、当然ながら、専業主婦や学生、高齢者、病気療養中の人は含まれない。

20年前とえいば、バブル末期ながら、いまよりは景気もよく、専業主婦も少なくなかった。職の質も高かった。従って、その当時並みの低水準という数字は評価できるだろう。この数字を後押ししているのは、女性の雇用情勢の改善という。この点については、共働きでなければ生活が厳しい昨今の情勢にあって、専業主婦が、強く選り好みせず、パートやアルバイトへスライドしたとすれば、当然の結果であり、決して手放しで評価できるとはいえないだろう。

失業者が少ないだけでは幸福な社会の実現はない

もっとも、厚労省が発表した同月の有効求人倍率は1.24倍と高水準。全体として、ある程度は仕事を吟味できる状態にあるという点では、仕事の需給バランスは改善傾向にあるといえるのかもしれない。ただし、ここにも少々カラクリがある。飲食や介護系などは、ブラックのイメージが強まり、募集しても人が十分に集まりづらい状況にある。建設業では、人手不足が深刻で技術継承も危ぶまれている。仕事があぶれているといっても、実態は人気不人気が明確になっているだけともみれなくはないのだ。

政府は「一億総活躍社会」を打ち出している。その真意は、誰もがイキイキと職場で輝ける社会の実現のハズだ。その意味では、生活のために仕方なく働くという労働者があぶれているようでは、看板倒れといわれても仕方がない。完全失業率の低水準傾向は、ひとまず評価できるとしても次のステップでは、全ての人が輝けるような人材の最適化が求められる。

そのための有効な政策の投入はもちろんだが、併せて、職に就く者自身も、「自分が活きる・活かされるふさわしい仕事は何か」という目的意識を持ち、努力を続けることも必須といえるだろう。そうなれば、その先には、“完全就職率”100%という、成熟社会のお手本となる様な希望あふれる社会の実現が待っているかもしれない。

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