
“資生堂ショック”とはあまりにセンスが貧相だが…【瓦の目】
子育て女性を「優遇」と捉えるからややこしくなる
男性が3人集まれば上をみて、女性が三人集まれば横を見るといわれている。男はヒエラルキーに生き、女は仲間に生きるといった意味合いだ。確かに男性は「○○部長のために」が多く、女性は「○○さんのために」が多い印象はある。とにかく周囲の動向が気になる。その傾向が女性には強いのは確かだろう。
資生堂が、育児中の社員にも土日勤務や遅番を要請していることがちょっとした話題となり“資生堂ショック”といわれているらしい。子育て社員の“優遇”をなくすことに対する否定的な声とそうした差別をしないことを「進んでいる」とする肯定的な意見が混じっているようだが、「ショック」という響きからは否定的な捉え方が多い印象を受ける。周囲が気になる女性にとっては、働く女性に優しい印象の企業が、それを撤回するかの動きだから“ショック”ということなのか…。
このトピックを聞き、すぐに頭に浮かんだのが、4時間正社員を導入する企業を取材した時のことだ。勤務時間の長短に関わらず優秀なら昇進もあるという同社のシステム。実力主義といえばそれまでだが、不平等感もにじみ出ている。その見解は「いずれ自分達も通る道なんだよ、とフルタイムの社員には説明しています」というものだった。つまり、いまは確かに不平等かもしれないが、「その時」が来れば同様に“恩恵”を受ける。いまはそのプロセスにある、ということだ。それで全員が納得してるかはともかく、その担当者が「当の時短社員がいつも後ろ髪をひかれながら職場を後にしています」と言っていたことが印象的だった。
資生堂の対応は“鬼”なのか
この話と比べれば、資生堂の対応は、“鬼”のようにも思える。大事なことは、「子育て中なんだから時短で当然よ」という空気があったのか、なかったのか、である。おそらく、ほとんどの時短社員は忙しい時期に職場を離れ、同僚に対し、後ろ髪魅かれる思いだったに違いない。そうした思いは言葉はなくとも伝わるものだ。だが、忙しさや売り上げの減少などが重なり、ストレスが増大。フォローする社員に他人を思いやる余裕が失われてしまったのかもしれない。その空気を察し、それを思い出させるための少し強めの経営側の配慮が、今回の“資生堂ショック”となったのだろう。
ハッキリいえば「ショック」でもなんでもない。売り上げ減もあったというから、経済合理性を考えれば当然の経営判断だ。さらにいえば、不平等以上に「アンフェア」を嫌う女性にとっては、負担は増すが、願ったりの展開というのが本当のところかもしれない。そもそも、子育て関連で本当に都合がつけられず、繁忙期に職場を離れなければならない事態になれば、その時こそ、同僚や会社がフォローすればいいだけの話である。“資生堂ショック”は、働く女性が、いよいよ男性と同等に活躍するために当人や社会が本気で働き方に向き合い始めた兆候であり、“成長痛”というのが正しい見方だろう。もはや男性も上ばかり見ている時代ではない。
「One for All , All for One」だ。