働き方

定年消滅時代に不幸な高齢ワーカー生まない妙案とは

投稿日:2015年11月16日 / by

高齢社会に“総活躍”を期待できるのか

新しい働き方の文脈には、「定年」という概念はない。次世代の働き方においては、あまりに不確実で定められないからだ。では、シニアはいつリタイアするのか…。勤めた会社で迎えるかはともかく、70歳あるいは生涯現役も珍しくなるだろう。

こういうと厳しい未来が待ち受けている印象だが、そんなことはない。その根拠は、働き続ける方が、健康的で長生きできるというデータがあることがひとつ。そして、日本の場合、シニア自身が働く意欲が強いということだ。エン・ジャパンの調査では、「雇用延長制度」に賛成が91%。年金問題もあり、金銭的な不安も背景にはありそうだが、それにしても「定年後のんびり」派は、大きく減少している。

『ミドルの転職』ユーザーアンケート集計結果(http://mid-tenshoku.com/)

『雇用延長制度』についてどう思われますか?(『ミドルの転職』ユーザーアンケート集計結果)

そもそも、いつ仕事を辞めるのかは、定年があろうがなかろうが自分で決めるのが一番しっくりくる。定年が明確だった80年代なら、定年を一区切りとするのもありだったろう。だが、いつ会社が傾く分からない昨今の状況では、自分が主体になり、いつまでに、いくらくらい稼いで、いつリタイアし、どう生活していくのかを考えなければ、人生の設計図などまともに描けない。

例えば30代でリタイアしたいなら、とにかく高額報酬が見込める職に就き、がむしゃらに働くのがベターだろう。60歳くらいまで働きたいなら、時代に左右されない業種を選び、そこでゆったりマイペースで働くという道もあろう。雇われの身からは早々と足を洗い、起業するという手もあるだろう。要するに、これからの時代、自ら引き際を決められるようでなければ、安心して暮らしてはいけないということだ。

引き際明確にできる仕組みづくりが重要

体が資本のアスリートは分かりやすい。昨日11月15日、プロレスの世界から引退した天龍源一郎は、40代が一般的な引退時期を大幅に更新する65歳まで、一線で活躍し続けた。今シーズン限りで引退した中日ドラゴンズの山本昌は、NPB史上最年長試合出場記録を残し、49歳で球界を去った。J2横浜FCの三浦知良は、48歳のいまも現役で活躍し、来季の契約もすでに更新している。アスリートは、その肉体が限界に達すれば、そこでジ・エンド。「定年」はないが、「引き際」がハッキリしている。

シニアが活躍し続ける負の側面として、若者の居場所が制約されることが挙げられるが、アスリート世界の場合、多くはその逆で、自身の目指すべきロールモデルとして、リスペクトされる。ビジネスの世界でそうなりづらい要因は、引き際が自分の判断でなく、会社の都合を見極めながらの他力本願だからなのかもしれない。能力が頭打ちで体力が衰えても、自ら申し出なければ、基本、働き続けられる。

雇用延長をするにあたって、企業側のデメリットは何だと思いますか。※複数回答可(『ミドルの転職』ユーザーアンケート集計結果)

雇用延長をするにあたって、企業側のデメリットは何だと思いますか。※複数回答可(『ミドルの転職』ユーザーアンケート集計結果)

そうしたことの対策も含め、かつて賛否の割れた40歳定年制をベースに、働き方のモデルを組み直してはどうだろうか。つまり、40歳の時点で、今後を定めてもらい、バリバリ行くのか、のんびり行くのかを決めるのだ。バリバリ派には年功序列と成果報酬を適用。のんびり派は昇給も賞与も最低限とする。そこで浮く予算を原資に、若者の採用や育成にあてればいい。

9割以上が定年延長に賛成しているワケだが、その母集団の中でもバリバリ派なのか、のんびりマイペース派か、ははっきりと分かれるハズだ。その意思を、早い段階で当人に確認する機会を設けるのだ。仮に現職から身を引く決断をするとしても40歳なら、まだ十分にやり直しもきく。給与に関わることだけに会社側の一方的な都合で決めるのはアンフェアでもある。

アスリートに肉体の限界という明確なサインがあるのと同様に、会社員では「モチベーション」をそのモノサシとし、納得のいく“引き際”を決断できるようにすれば、シニア社員がぬれ落ち葉のようなみじめな晩年を迎えることもなくなり、企業にとっても、人員整理をより健全に計画的に進める土壌が整うではないだろうか。

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