
Vol.1 新しい働き方が注目される背景
新しい働き方がなぜ注目されているのか

YOSCAはオフィスレスなワークスタイルを実践している:http://w-kawara.jp/originality/no-office/
「ワークスタイル変革」の文字が目につくようになってきた。なぜ、ここへきて、「新しい働き方」が注目され始めているのか。大きな背景は2つある。
ひとつは、テクノロジーの進化により、
(1)仮想オフィスの導入が簡単になったこと。
もうひとつは、
(2)震災等による事業継続(BCP)の観点からの必要性だ。
(1)のオフィス仮想化は、業務を時間と場所から解放する。オフィスにあったデータが、“雲”の上に移管されるのだから、時間にも空間にも縛られなくなる。従って、社員はいつでもどこでも仕事をすることが可能となる。セキュリティやコミュニケーションにおけるデメリットもゼロではないが、ペーパレス化によるコスト削減や生産性の向上などマイナスを上回るリターンがあり、現状打破に苦心する企業にとっても注目せざる得ない状況にあるといえる。
(2)のBCPの観点については、2011年3月の東日本大震災により、一気に注目度が高まった。すでに技術的にはそれまでにもかなり整備はされていたが、最大級の災害の中で現実に活用シーンが訪れ、その必要性を各企業が痛感。昨今は、温暖化による天候不順なども増加傾向にあり、交通機関のマヒも頻発するなど、そのニーズは年々高まっている。
政府によるリモートワーク促進も追い風
政府によるリモートワーク促進も追い風となっている。時間と場所にとらわれない新しいワークスタイルは、女性の活用を推進する政府にとって、都合がいい。子育てしながら、自宅でも業務を行えるためだ。さらに今後、日本は高齢化が深刻化し、労働力が不足する。多様な働き方を可能にする新しい働き方は、企業にとって人材難への対策にもつながる。
企業はもちろん、そこで働く社員、そして社会にとってもメリットのある働き方。従来の働き方は、右肩上がりの時代には、確かにベストに近かったが、成熟の時代にあっては、もはや機能しなくなりつつある。誰もがそうしたことを潜在的に感じ始めている中で、冒頭の2つが重なり、一気に導入が加速したのが、昨今の新しい働き方の注目度上昇のメカニズムといえるだろう。
ところで、「新しい働き方」とは具体的にどういう働き方なのか? 「新しい」といっても何がどう新しいのかは分からず、イメージが先行している感もある。その実像をあえて示せば、ICTを活用した時間と場所にとらわれないワークスタイルと定義できるだろう。いつでもどこでもオフィス同様に業務を遂行する。つまり、オフィスに全社員が揃って同じ時間に仕事をするスタイルとの決別が、新しい働き方への一歩となる。
次回以降では具体的な導入フローや事例をみながら、その課題や可能性を探っていく。(毎週月曜日:全5回)