働き方

働き方用語の正しい読み方【女性活躍推進法】

投稿日:2015年9月15日 / by

【女性活躍推進法】

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効力はどれくらいあるのか

女性活躍推進法が成立した。これにより、法律で女性の活躍を後押しするベースができたことになる。では一体、この法律によって、職場はどう変わるのか。本当に女性は活躍できるようになるのか…。義務付けられる内容を解析しながら、その可能性を探る。

そもそも何のためにこんな法律が制定されたのか。それは「女性が、職業生活において、その希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するため」だ。対象となるのは、従業員数301人の事業主。いわゆる中堅以上クラスだ。それ以下の規模は、努力義務となっている。

対象企業はまず、平成28年4月1日までに女性の(1)活躍状況の把握・課題分析、(2)行動計画の策定・届出、(3)情報公表などを行うことが義務付けられる。

具体的にみてみよう。(1)は、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率について、が必須項目。これらを把握し、課題分析を行う。(2)は、それを踏まえ、行動計画を策定し、都道府県労働局への届出、労働者への周知、外部への公表を行う。行動計画には数値目標や内容も盛り込む必要がある。そして(3)は、自社の女性の活躍に関する情報を公表する。以上が、事業者の義務となる。

どうだろうか。これで女性の活躍が推進されると感じるだろうか。内容だけをみれば、女性の働いている状況を把握し、悪ければ改善し、良ければ継続するなど、これまでの取り組みを改めて見直す意味では有効ともいえるかもしれない。対象の規模クラスなら、すでに“合格ライン”に達している企業も意外に多いかもしれない。そうでない企業は、あわてて帳尻合わそうとするかもしれない。そうしたざわつきは起こせても、「女性の活躍推進」のカンフル剤にまでなるとは思えない。

法律に期待できることは…

その原因は、取り組みの内容が問題の表面しかなぞっていないことが大きいだろう。例えば、(1)で勤続年数の男女差で両者に著しい差があったとする。そうすると、対策としては制度の充実やこれまで以上のサポートを実施する、など当たり障りのないものが出てくるだろう。だが、こうしたことはこれまでに整備だけはたいていの企業ですでにされている。結局、問題の根っこは、昔からはびこる男女の役割のようなところへ行き着いてしまう。

そうなるともはや、女性活躍推進は制度や仕組みによる領域を超越する。それが、これまで男女平等が叫ばれながら、いまだ実現していない元凶だ。今回の法律で、その壁が破られるかと期待したいが、残念ながらそういう類の問題ではないのだ。その意味では、せめて、ようやく拡がる兆しが見え始めたイクメンにおいて、この法律が追い風となるような動きが起こってくれば、成立した価値もあるといえるかもしれない。

woman001とはいえ、本気で有効性を伴わせるなら、規模を問わず、女性を活躍させた企業には助成金や補助金を配るのがいいだろう。バラまきを推奨するわけではないが、こうしたことを一律で「やりましょう」としても、“仮面男女平等”がはびこるだけだ。だからこそ、「やったら評価する」というスタンスが、ベターだ。そもそも、これからの時代、女性が活躍できる組織でなければ生き残ることは困難で、自然淘汰という、最大の制裁がある。

実際、こうした法案に関係なく、女性をうまく活用している企業は増えている。そして、そうした企業は例外なく業績が順調だ。優秀な女性もすでに自分の価値に気付き始めている。自分の売り方を心得ている。人材業界もそうした女性人材に着目し、女性が働きやすい企業の開拓を強化している。30年前の男女雇用機会均等法の制定から30年。単なるアドバルーンだった法案も、いまや、取り組まなければ企業寿命を縮めかねないほど、環境が変化した。その意味では、女性活躍推進法にはそのフィルターとしての役割くらいはあるといえそうだ。

なお、全面施行後の義務企業の行動計画策定届出率は、1万5,398社のうち、1万3,087社で、85%(2016年4月末現在)となっている。また、そのうち、一定の基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況等が優良な企業として認定マーク(愛称「えるぼし」)を受けた企業は、46社だった。

→ 施行目前の女性活躍推進法の認知度はわずか1割

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