働き方

労働者派遣法改正案が「改悪」という前にすべきこと【瓦の目】

投稿日:2015年9月11日 / by

改正か改悪か

ws2労働者派遣法改正案が成立した。「改正案」となっているが、「改悪」という声も多く、賛否は割れている。どんな事案にも反対意見はあり、判断は立場によって変わるが、あえて弱者である労働者側に立って、この案について考察する。

いわゆる派遣社員にとって、大きな影響があるのは、業種の制限がなくなったこと。さらにそこに3年という制限が加わったことだ。前者は、派遣労働者にとって、幅広い選択肢ができることなり、改正ともいえる要素だ。一方、後者は、3年しか働けない、という非正規の不安定を助長する「改悪」といえる条項だろう。

改悪となりかねない後者については一応、リスクヘッジがされている。継続雇用を希望する場合には、直接雇用に切り替える、新たな派遣先提供の義務付け。もしくは派遣元が無期雇用するというものだ。これらによって、この法案は派遣社員にとって、雇用を安定にするものだというのが、政府が「改正」と謳う根拠だ。

しかし、企業側が、派遣社員を直接雇用に切り替えるとは考えずらい。それならば、これまでもそうした動きが盛んだったはずだからだ。残念ながら、景気変動に合わせ都合よく使い捨てにしていたのが実状だ。派遣元が無期雇用するというのも、現実的とはいえないだろう。人材を横流しして、その仲介料で稼ぐビジネスゆえに、固定費が増すことをわざわざはするとは思えない。

非正規労働者のあるべき姿とは

こうやって考えると、労働者側には、残念ながらこの法案は「改悪」という風にしかみえてこない。しかし、である。この法案をぶち上げたそもそもの発端は、多様で柔軟な働き方を実現するためだ。つまり、正社員という制約の多い働き方に加え、派遣を同等に拡大することで、ワークスタイルに合った働き方ができる選択肢を増やすことにある。故に、「同一労働同一賃金」も盛り込まれている。そこに立ち返れば、この法案成立後の非正規労働者のあるべき姿がみえてくる。

非正規の労働者は何よりも、スキルを磨き上げ、派遣先で最大限に活躍できる努力を惜しまないことだ。それに呼応し、派遣会社は、派遣登録者のスキルアップに注力し、人材サポート会社としての力を底上げする。その上で、派遣先企業をこれまで以上に開拓するということだ。そもそも正社員神話は、もはや幻想に近く、必ずしも「安定」とは言えないのが実情だ。労働者にとっては、“自立”するチャンスであり、派遣会社にとっても、今後の人材流動化時代に飛躍する絶好機となる。

どうしても正社員になりたい。しかし、なれなくて非正規に甘んじている人も少なくないだろう。そういう人は、業種の幅が広がったことを逆手にとり、希望の業種に派遣で乗り込み、正規への道を模索すればいい。もともと正社員にこだわりのない人は、制約の少ない働き方でワークライフバランスを重視するなど、マイペースで自分らしく働けばいい。

「改悪だ」、「改正だ」と騒ぐのは簡単だ。だが、本来、働き方ほど個々の価値感に密接にかかわるテーマはない。自分はどうしたいのか…。まずそこを明確にした上で、周囲に振り回されず、あくまで自分の頭でしっかりと考え、善悪の判断はすべきだろう。その結果、選択した道なら、もしもうまくいかなくとも後悔はないハズだ。

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